希望の国
2013-06-18(Tue)
園子温監督が「ヒミズ」の舞台を震災後の世界に
設定し直して撮ったのは、
単なる思い付きではなかった事がよく分かった。

監督:園子温
製作:2012年 日本・イギリス・台湾
上映時間:133分
出演者:*夏八木勲 *大谷直子 *村上淳 *神楽坂恵
*清水優 *梶原ひかり *でんでん *河原崎建三
それでも世界は美しい
突然おとずれた不安、痛み、苦しみ、別れ・・・・・・
ただ、愛するものを守りたい
園監督は、日本で起きた震災と原発事故を、
決して風化させてはならないと思ったのでしょうね。
多くの日本人が忘れかけている事、
未だに苦しんでいる人々が大勢いる事、
問題が解決されていない事を憂慮しています。
エログロを封印し強烈な毒もない本作を
物足りないと考える人もいるでしょうけど、
そのような作品はまた後に撮れるでしょう。
園監督が今撮りたかったのは、
震災・原発事故後の日本の姿。
そこに本気で向き合った心意気が
胸に突き刺さってくる作品です。
ネタバレあるかも ↓
3・11後に再び大地震が起き、
原発事故が発生したという設定。
架空の長島県大原町に住む3組の男女が登場します。
住み慣れた家を出ていかねばならない悲しみ、
家族が離れ離れになってしまう苦しみ、
目に見えない放射能への恐怖、
国への不信感・・・
どれも3・11の被災者が感じた通りでしょうね。
あれから、日本の状況は変わらず、
失われた故郷は元に戻っていない!
「人は生きる時に杭を打たれる」のシーンで、
本当に打たれる杭とその音が印象的でした。
そこで「自分で生きなきゃダメ」と息子を励ました
父親(夏八木勲)の取った行動は、彼なりの
守り方なんでしょうけど、重苦しかったですね・・・
認知症の妻(大谷直子)の「おうちへ帰ろうよ」も
耳に残りました。
帰る場所なんてないのに繰り返し口から出てくる言葉は、
被災者の気持ちと重なります。
見えない戦争の終わりが見えないんですよね。
それなのに「暗い気持ちを忘れてドンと構えておけ」なんて、
考えたくなくてごまかしているだけだもんね。
タイトル通りに希望があるようには思えません。
「愛があるから大丈夫よ」はまともに受け取っていいのか?
でもこうなると、「愛=人との絆」のみが希望なんですよね。
3組の男女とも、相手を理解し合い、
同じ方向を向いていた事が救いでした。
これからの日本人は絆を大切にしながら、
一歩一歩踏みしめて進んで行かなければならない。
そうしなければ、希望の国は作れない。
中日新聞夕刊に園監督(愛知県出身)のコラムが
月1回掲載されるのですが、6/4の記事で
亡くなった夏八木さんを偲んでおられました。
本作による毎日映画コンクール男優主演賞の
表彰式(今年2月)では、痩せた原因を
「あまり食べない健康法を試しているんだ」と
僕を心配させないように、いい嘘とついてくれた、と。
本作での重厚な演技が素晴らしかったです。
ご冥福をお祈りいたします。
関連記事*****
「愛のむきだし」
「冷たい熱帯魚」
「恋の罪」
「ヒミズ」
設定し直して撮ったのは、
単なる思い付きではなかった事がよく分かった。

監督:園子温
製作:2012年 日本・イギリス・台湾
上映時間:133分
出演者:*夏八木勲 *大谷直子 *村上淳 *神楽坂恵
*清水優 *梶原ひかり *でんでん *河原崎建三
それでも世界は美しい
突然おとずれた不安、痛み、苦しみ、別れ・・・・・・
ただ、愛するものを守りたい
園監督は、日本で起きた震災と原発事故を、
決して風化させてはならないと思ったのでしょうね。
多くの日本人が忘れかけている事、
未だに苦しんでいる人々が大勢いる事、
問題が解決されていない事を憂慮しています。
エログロを封印し強烈な毒もない本作を
物足りないと考える人もいるでしょうけど、
そのような作品はまた後に撮れるでしょう。
園監督が今撮りたかったのは、
震災・原発事故後の日本の姿。
そこに本気で向き合った心意気が
胸に突き刺さってくる作品です。
ネタバレあるかも ↓
3・11後に再び大地震が起き、
原発事故が発生したという設定。
架空の長島県大原町に住む3組の男女が登場します。
住み慣れた家を出ていかねばならない悲しみ、
家族が離れ離れになってしまう苦しみ、
目に見えない放射能への恐怖、
国への不信感・・・
どれも3・11の被災者が感じた通りでしょうね。
あれから、日本の状況は変わらず、
失われた故郷は元に戻っていない!
「人は生きる時に杭を打たれる」のシーンで、
本当に打たれる杭とその音が印象的でした。
そこで「自分で生きなきゃダメ」と息子を励ました
父親(夏八木勲)の取った行動は、彼なりの
守り方なんでしょうけど、重苦しかったですね・・・
認知症の妻(大谷直子)の「おうちへ帰ろうよ」も
耳に残りました。
帰る場所なんてないのに繰り返し口から出てくる言葉は、
被災者の気持ちと重なります。
見えない戦争の終わりが見えないんですよね。
それなのに「暗い気持ちを忘れてドンと構えておけ」なんて、
考えたくなくてごまかしているだけだもんね。
タイトル通りに希望があるようには思えません。
「愛があるから大丈夫よ」はまともに受け取っていいのか?
でもこうなると、「愛=人との絆」のみが希望なんですよね。
3組の男女とも、相手を理解し合い、
同じ方向を向いていた事が救いでした。
これからの日本人は絆を大切にしながら、
一歩一歩踏みしめて進んで行かなければならない。
そうしなければ、希望の国は作れない。
中日新聞夕刊に園監督(愛知県出身)のコラムが
月1回掲載されるのですが、6/4の記事で
亡くなった夏八木さんを偲んでおられました。
本作による毎日映画コンクール男優主演賞の
表彰式(今年2月)では、痩せた原因を
「あまり食べない健康法を試しているんだ」と
僕を心配させないように、いい嘘とついてくれた、と。
本作での重厚な演技が素晴らしかったです。
ご冥福をお祈りいたします。
関連記事*****
「愛のむきだし」
「冷たい熱帯魚」
「恋の罪」
「ヒミズ」