悪人
2011-07-02(Sat)
孤独感や寂寥感や閉塞感が痛いほどに突き刺さってきた・・・

監督:李相日
製作:2010年 日本
原作:吉田修一
出演:*妻夫木聡 *深津絵里 *岡田将生 *柄本明 *樹木希林
*宮崎美子 *満島ひかり
ひとつの殺人事件。引き裂かれた家族。誰が本当の“悪人”なのか?
登場する若者は、誰もが上辺だけの人間関係しか築けていません。
人をからかい、その場限りの楽しさを求めるのみ。
出会い系サイト・・・男は下心のみで女に会うんじゃないの?と、
全く良いイメージがないのよね。
案の定、光代(深津絵里)と会う約束をした祐一(妻夫木聡)は、
食事やドライブもそっちのけで、ホテルへ行こうと誘い、
光代の顔を見ないように後ろから抱きます。
やっぱりね、出会い系サイトってそんなものでしょ。
ところが、分別のつきそうな30代の光代が、
「本気でメールを送った」と言います。
こういう手段でしか、人と出会うチャンスがないのか・・・と、
地方都市の現実を知って、軽いショックを受けました。
光代の狭い世界。妹との対比で伝わってくる侘しさ。切ない。。。
初対面の祐一は死んだような目で冷淡だったけど、
実は彼も本気で人と触れ合いたい願望を持っていたので、
光代の言葉に心を動かされます。
祐一の生気の無い眼差しには、それなりの理由がありました。
小さい頃に母親に捨てられ、今は育ててくれた祖父母との生活。
海に阻まれた狭い漁村での鬱屈した毎日。
同じ孤独を抱いている2人が結びつくのは容易いでしょう。
だけどそのタイミングは皮肉にも少しズレていた・・・
罪を犯す人が本当の悪人とは言い切れなかったりします。
全くそのつもりは無かったのに、ほんのちょっとした弾みで
思わぬ方向へ転落してしまったという事もあるからね。
誰もが加害者あるいは被害者になり得るんですよね。
事件に関わっている佳乃(満島ひかり)は打算的で、
他人を見下す心無い女。
増尾(岡田将生)は虚勢を張った軽薄な男。
よっぽど彼らの方が悪く見えるくらい。
彼らだけじゃなく、人は誰でも悪の部分を持っているし、
不運が重なる事で、誰もが人を殺める立場になってしまうかもしれない。
だけど、たいていはその手前で踏みとどまるのでは?
祐一は言う。もっと早くに光代に会っておけば良かったと。
光代に会う前は「女が悪いから当然だ」と思っていたが、
光代と会って、やった事が怖くなったと。
被害者佳乃の父(柄本明)が嘆く。
大切な人もいない人間が多過ぎると。
大切に思う人、守りたい人がいれば、
きっと人は、道を外さずにいられる。
物事に強く立ち向かっていける。
祐一がそれに気付いた時は、もう遅かった・・・なんと言う悲劇。
一方、加害者・被害者の家族も人生を狂わされます。
立場的に、祖母や両親の思いが一番心に響いてきたなあ。
どんな子でも、愛おしいし信じたいと思うし、
守るために自分が強くありたいと思うんですよね。
ラストに祐一は、光代をただの被害者にするために、
悪人を演じます。これもまた切ない。けど希望もあるのかも。
加害者側に同情しそうなドラマだけど、
被害者側の父の感情もしっかり伝わってきました。
若者の孤独感・寂寥感・閉塞感、
肉親の悲しみ・怒り・苦しみが胸に突き刺さって来る
作品でした。
#2010年日本アカデミー賞 主演男優賞・主演女優賞・助演男優賞・
助演女優賞・音楽賞 受賞

監督:李相日
製作:2010年 日本
原作:吉田修一
出演:*妻夫木聡 *深津絵里 *岡田将生 *柄本明 *樹木希林
*宮崎美子 *満島ひかり
ひとつの殺人事件。引き裂かれた家族。誰が本当の“悪人”なのか?
登場する若者は、誰もが上辺だけの人間関係しか築けていません。
人をからかい、その場限りの楽しさを求めるのみ。
出会い系サイト・・・男は下心のみで女に会うんじゃないの?と、
全く良いイメージがないのよね。
案の定、光代(深津絵里)と会う約束をした祐一(妻夫木聡)は、
食事やドライブもそっちのけで、ホテルへ行こうと誘い、
光代の顔を見ないように後ろから抱きます。
やっぱりね、出会い系サイトってそんなものでしょ。
ところが、分別のつきそうな30代の光代が、
「本気でメールを送った」と言います。
こういう手段でしか、人と出会うチャンスがないのか・・・と、
地方都市の現実を知って、軽いショックを受けました。
光代の狭い世界。妹との対比で伝わってくる侘しさ。切ない。。。
初対面の祐一は死んだような目で冷淡だったけど、
実は彼も本気で人と触れ合いたい願望を持っていたので、
光代の言葉に心を動かされます。
祐一の生気の無い眼差しには、それなりの理由がありました。
小さい頃に母親に捨てられ、今は育ててくれた祖父母との生活。
海に阻まれた狭い漁村での鬱屈した毎日。
同じ孤独を抱いている2人が結びつくのは容易いでしょう。
だけどそのタイミングは皮肉にも少しズレていた・・・
罪を犯す人が本当の悪人とは言い切れなかったりします。
全くそのつもりは無かったのに、ほんのちょっとした弾みで
思わぬ方向へ転落してしまったという事もあるからね。
誰もが加害者あるいは被害者になり得るんですよね。
事件に関わっている佳乃(満島ひかり)は打算的で、
他人を見下す心無い女。
増尾(岡田将生)は虚勢を張った軽薄な男。
よっぽど彼らの方が悪く見えるくらい。
彼らだけじゃなく、人は誰でも悪の部分を持っているし、
不運が重なる事で、誰もが人を殺める立場になってしまうかもしれない。
だけど、たいていはその手前で踏みとどまるのでは?
祐一は言う。もっと早くに光代に会っておけば良かったと。
光代に会う前は「女が悪いから当然だ」と思っていたが、
光代と会って、やった事が怖くなったと。
被害者佳乃の父(柄本明)が嘆く。
大切な人もいない人間が多過ぎると。
大切に思う人、守りたい人がいれば、
きっと人は、道を外さずにいられる。
物事に強く立ち向かっていける。
祐一がそれに気付いた時は、もう遅かった・・・なんと言う悲劇。
一方、加害者・被害者の家族も人生を狂わされます。
立場的に、祖母や両親の思いが一番心に響いてきたなあ。
どんな子でも、愛おしいし信じたいと思うし、
守るために自分が強くありたいと思うんですよね。
ラストに祐一は、光代をただの被害者にするために、
悪人を演じます。これもまた切ない。けど希望もあるのかも。
加害者側に同情しそうなドラマだけど、
被害者側の父の感情もしっかり伝わってきました。
若者の孤独感・寂寥感・閉塞感、
肉親の悲しみ・怒り・苦しみが胸に突き刺さって来る
作品でした。
#2010年日本アカデミー賞 主演男優賞・主演女優賞・助演男優賞・
助演女優賞・音楽賞 受賞