キャタピラー
2011-06-29(Wed)
ベルリン国際映画祭で寺島しのぶさんが最優秀女優賞を受賞したと
話題になっていたので、観てみました。
身体を張った演技、戸惑い苛立つ内面の演技、感情を顕わにする演技、
どれも観客を圧倒する凄まじいものでした☆
芋虫の姿になった大西信満さんも大変だっただろうなあ・・・

監督:若松孝二
製作2010年 日本
出演:*寺島しのぶ *大西信満 *横澤健 *粕谷佳五 *篠原勝之
忘れるな、これが戦争だ・・・
「忘れるな、これが戦争だ」とコピーにあるように、
本作は反戦をテーマにしているのでしょう。
それと同時に夫婦の愛憎も描かれていました。
映画が始まってしばらくしてから出る「キャタピラー」(芋虫)のタイトル。
このシーンで息を呑んだ・・・
まさにこれが戦争か・・・ってグサッときました。
日中戦争で負傷して帰って来た黒川久蔵(大西信満)は、
四肢を失い火傷を負い、耳も聞こえず言葉ももどかしい状態。
食べ物と妻の肉体を要求し続ける肉の塊は獣のよう。
動けなくて何も一人で出来ない彼が、食欲と性欲だけは
衰えていない事が、かなり衝撃的です。
生き物が生きるための基本的な欲望はこれか・・・って感じで。
でも、食べるシーンはガツガツと勢いがあるんだけど、
夫婦の絡みのシーンは割と淡々と撮ってましたね。
(多くてくどいけどね(^^;)
淫靡さが足りないって言うか、彼女をもっと美しく撮れただろうに、
せっかく寺島しのぶが体当たりの演技をしてるのに、
艶やかさが無くて、もったいないと思ったなあ。
村人は、彼を「軍神様」と崇め、シゲ子に「お国の為にも
世話をしてあげて」と当然のように言います。
親兄弟誰も手伝いに来なくて、延々と2人だけの時間が続きます。
戦場から帰っても、戦争は家族を犠牲にするんですね。
人々の人生を奪い、生活を奪う。
心の中にある悲しみ辛さは「お国の為に」という言葉で
全て覆い隠さなければならない。
シゲ子は耐える事を強いられ、夫に献身的に尽くします。
しかし、その希望の無さに、泣き崩れる事もしばしば。
シゲ子が夫に軍服を着せリヤカーに乗せて村を歩くと、
村人は皆、彼女を「銃後の妻の鑑」「貞節な妻」と誉めたたえる。
それで彼女は自分のプライドを満足させ、
生きる気力へと変えていったんだと思います。
そこに彼女の強さがありましたね。
動けない久蔵と生活の主導権を握っているシゲ子は、
次第に立場が逆転していく。
シゲ子は自分から久蔵の上にまたがる事も。
そんなシゲ子の復讐にも似た表情を見て、
久蔵は中国での凌辱行為がフラッシュバックするようになる。
戦争の狂気によって犯してしまった罪の意識に苛まれ、
苦しむのは、「マイ・ブラザー」にも共通する話ですね。
だけど、久蔵が出兵する前から、シゲ子に暴力を振るっていた
と言うくだりがあるので、反戦のテーマがボヤけるんだなあ・・・
この時代の女達は男からも抑圧され、
「お国の為に」という建前にも抑圧されていたと言う事ですね。
久蔵は自分の罪を悔いるようになってから、
ただの肉の塊ではなくて人間らしさを取り戻したように見えます。
ラストの姿は、最後に残っていた自尊心の表れなんですよね。
敗戦と共に、シゲ子は解放されたんだけど、
「食べて寝て、それでいい。2人で生きていこう」の言葉や
泣き・笑いの様々な表情に、夫への愛情が感じられました。
エンドロールの絞首刑のフィルムや、
元ちとせの「死んだ女の子」という歌は強烈。
それまでの雰囲気とはちょっと違和感を感じたくらい。
でも、ここで反戦のテーマがグッと大きくなってますね。
誰もが皆、無益で不毛な戦争に翻弄されてきた・・・
虚しさが残ります。
#2010年 ベルリン国際映画祭 銀熊賞(女優賞)受賞
話題になっていたので、観てみました。
身体を張った演技、戸惑い苛立つ内面の演技、感情を顕わにする演技、
どれも観客を圧倒する凄まじいものでした☆
芋虫の姿になった大西信満さんも大変だっただろうなあ・・・

監督:若松孝二
製作2010年 日本
出演:*寺島しのぶ *大西信満 *横澤健 *粕谷佳五 *篠原勝之
忘れるな、これが戦争だ・・・
「忘れるな、これが戦争だ」とコピーにあるように、
本作は反戦をテーマにしているのでしょう。
それと同時に夫婦の愛憎も描かれていました。
映画が始まってしばらくしてから出る「キャタピラー」(芋虫)のタイトル。
このシーンで息を呑んだ・・・
まさにこれが戦争か・・・ってグサッときました。
日中戦争で負傷して帰って来た黒川久蔵(大西信満)は、
四肢を失い火傷を負い、耳も聞こえず言葉ももどかしい状態。
食べ物と妻の肉体を要求し続ける肉の塊は獣のよう。
動けなくて何も一人で出来ない彼が、食欲と性欲だけは
衰えていない事が、かなり衝撃的です。
生き物が生きるための基本的な欲望はこれか・・・って感じで。
でも、食べるシーンはガツガツと勢いがあるんだけど、
夫婦の絡みのシーンは割と淡々と撮ってましたね。
(多くてくどいけどね(^^;)
淫靡さが足りないって言うか、彼女をもっと美しく撮れただろうに、
せっかく寺島しのぶが体当たりの演技をしてるのに、
艶やかさが無くて、もったいないと思ったなあ。
村人は、彼を「軍神様」と崇め、シゲ子に「お国の為にも
世話をしてあげて」と当然のように言います。
親兄弟誰も手伝いに来なくて、延々と2人だけの時間が続きます。
戦場から帰っても、戦争は家族を犠牲にするんですね。
人々の人生を奪い、生活を奪う。
心の中にある悲しみ辛さは「お国の為に」という言葉で
全て覆い隠さなければならない。
シゲ子は耐える事を強いられ、夫に献身的に尽くします。
しかし、その希望の無さに、泣き崩れる事もしばしば。
シゲ子が夫に軍服を着せリヤカーに乗せて村を歩くと、
村人は皆、彼女を「銃後の妻の鑑」「貞節な妻」と誉めたたえる。
それで彼女は自分のプライドを満足させ、
生きる気力へと変えていったんだと思います。
そこに彼女の強さがありましたね。
動けない久蔵と生活の主導権を握っているシゲ子は、
次第に立場が逆転していく。
シゲ子は自分から久蔵の上にまたがる事も。
そんなシゲ子の復讐にも似た表情を見て、
久蔵は中国での凌辱行為がフラッシュバックするようになる。
戦争の狂気によって犯してしまった罪の意識に苛まれ、
苦しむのは、「マイ・ブラザー」にも共通する話ですね。
だけど、久蔵が出兵する前から、シゲ子に暴力を振るっていた
と言うくだりがあるので、反戦のテーマがボヤけるんだなあ・・・
この時代の女達は男からも抑圧され、
「お国の為に」という建前にも抑圧されていたと言う事ですね。
久蔵は自分の罪を悔いるようになってから、
ただの肉の塊ではなくて人間らしさを取り戻したように見えます。
ラストの姿は、最後に残っていた自尊心の表れなんですよね。
敗戦と共に、シゲ子は解放されたんだけど、
「食べて寝て、それでいい。2人で生きていこう」の言葉や
泣き・笑いの様々な表情に、夫への愛情が感じられました。
エンドロールの絞首刑のフィルムや、
元ちとせの「死んだ女の子」という歌は強烈。
それまでの雰囲気とはちょっと違和感を感じたくらい。
でも、ここで反戦のテーマがグッと大きくなってますね。
誰もが皆、無益で不毛な戦争に翻弄されてきた・・・
虚しさが残ります。
#2010年 ベルリン国際映画祭 銀熊賞(女優賞)受賞
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