許されざる者
2010-02-03(Wed)
「インビクタス/負けざる者たち」の公開に合わせて、
レンタル店の目に付く場所に本作がディスプレイされていました。
これも、イーストウッド監督作品で、モーガン・フリーマンも出演しています。
なんとアカデミー賞作品賞を受賞してるんですね。

監督:クリント・イーストウッド
製作:1992年 アメリカ
出演:*クリント・イーストウッド *モーガン・フリーマン *ジーン・ハックマン
*リチャード・ハリス
10年以上前に観たけど、賞金稼ぎとラストシーンしか覚えてなくて・・(^_^;
再鑑賞してみたら、ただカッコいい西部劇じゃなかったです。
ダーティハリーが銃をバンバン撃っていたアクション劇と
暴力の連鎖を断ち切る「グラン・トリノ」の
中間に当たる作品のようです。
ネタバレあるかも暴力の痛み・虚しさを徹底的に描いているけど、
暴力を用いないで解決する方法はまだ見出していません。
西部劇らしく、やられたらやり返すところで終わっています。
それでも、普通の西部劇とはかなり異なった趣きで、
荒野のカッコいいヒーローが、典型的な悪党を
やっつける話ではありません。
そういう暴力を使った勧善懲悪の娯楽作品に
別れを告げたようなイーストウッド最後の西部劇でした。
カウボーイが娼婦を人間扱いせずにナイフで顔を傷つける。
ここから暴力の連鎖が始まります。
娼婦は復讐のために、カウボーイたちの首に賞金をかける。
賞金目当てにガンマンたちが集まってくる。
賞金稼ぎを排除しようと保安官は執拗な暴力を振るう。
どの登場人物も善の顔と悪の顔を持っていて、
それぞれに許されざる者のドラマがあるんですよね。
主人公ウィルは、子供の将来のための資金として、
賞金を狙って、お尋ね者を殺しに行くんだけど、
実はこの人物像がよく分からない・・・(^_^;
他の人の場合、
暴力を否定する描写はいろいろ出てきます。
標的にライフルを構えても結局撃てなかったり、
本当に殺してしまった後にいやな感情に襲われたり、
正義のために行使しているはずの暴力に周囲がひるんだり。
ところがウィルの場合、昔の俺とは違うと言って、
お酒も飲まず女を買う事もしない禁欲的な男なのに、
賞金(子供)のためなら人殺しも仕方ないとしています。
「殺しは非道な行為だ。
人の過去や未来を全て奪ってしまう」と分かっているのにですよ。
改心した人でも、「理由」があれば暴力を行使する、
その怖さを見せているのでしょうか。
「理由」は最後にも出てきます。
罪もない友人が受けたひどい仕打ちです。
それを聞き、ウィルは形相を変えてお酒をガブ飲みする。
そして大勢を相手に銃を撃ち放つ。
このシーンは、イーストウッドが渋くてカッコいいと
思っちゃうんですよね~
そう感じる私も許されざる者かもしれません。
「理由」なんて自分にとって都合のいいもので、
それがイコール正義じゃないんだけどね。
全体的には、やっぱり虚無感が残ります。
グラントリノの方向に向かう転換期の作品だと思いました。
#1992年 アカデミー賞 作品賞・助演男優賞・監督賞・編集賞 受賞
テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画
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コメント
こんばんわ、YANさん!
あたくしも昔鑑賞したことあるんですけど、
ほとんど忘れちゃいました。
名作なのに忘れるってとんでもないですよね(^^;
イーストウッド監督も映画作りで段階を踏んでるんですね!
代表作とか続けて鑑賞すれば、その成長とか堪能できるかも♪
(全部代表作なんで大変ですが・・・)
『インビクタス/負けざる者たち』は劇場行きですか?
あ~ほんとだ~。
今作はマカロニ・ウェスタンの頃と『グラン・トリノ』の
ちょうど中間に位置付けられるかも~!
そうそう、今作では暴力を否定しながらも、結局は暴力でしか解決できない感じなんですよね~
主人公は禁欲的ではあるけれども、家族や友人のためなら銃をとる。
それは自らが唯一大事にしてるもの(人)であるからで・・・
ただの暴力は否定してるんだけど、やらなきゃならない時はやる、みたいな。
でもYANさんの仰るように、
ナンダカンダ言ってもその理由は自分の主観的なもので
やられる側(の親とか)から見れば、やっぱり”許されざる者”。
それが根底に流れる虚しさ、なのでしょう・・・
こんにちは!
今だとブログのために感想を言葉に表すけど、
私も昔は特に何も考えずに映画を観てたから、
面白かったとかカッコ良かったとか、
そんな風にしか覚えてなくて、詳細は忘れてます(^_^;
イーストウッド監督作品はたくさんあって全部は観てないし、
傾向についても考えた事がなかったんだけど、
ちょっと辿ってきた道筋が見えると、なんか面白いもんですね。
「インビクタス」は、家でゆっくり何度も観たい気もするなあ。
今月はかなり忙しいので劇場鑑賞は難しいと思います。
そうか、始点となる作品としてはダーティハリーよりも前の
マカロニ・ウェスタンのほうが西部劇だし相応しいね。
さすが、わさぴょんさん、映画通。この作品の理解も深いです!
>家族や友人のためなら銃をとる
なるほど~、それだと理解し易いし、一本筋が通ってる感じ。
特にラストは復讐劇で憎しみと怒りからの行動だから、
ちょっと共感できる部分もあるんですよね。
だけど、いくら子供のためにお金がいるからって、
何の関わりもない人を撃つウィルの感覚はピンとこないんですよ~
奥さんの影響でまっとうな人間になっていたんだから、
子供のためにも犯罪(殺し)にはすごく抵抗があってもいいはずなのに。
そこでやめたら映画が始まらないけどね・・・(≧ε≦)
どんな理由であれ自分の主観的なもので暴力は不毛だっていうのは
最近の映画で多く語られているので、
以前に観た時よりも今の方が、感じ取れるものが多い気がしますね。
今観て良かったなあ。
>子供のためにも犯罪にはすごく抵抗があってもいいはずなのに。
ウィルは賞金稼ぎは「犯罪」だとは思ってないんじゃないかなぁ。
(と、ここで「賞金稼ぎは犯罪か?」を自分に問うてみたが難しいね・・・。)
ただの人殺し(例えば”暗殺or殺し屋”的な仕事とか)ならウィルはやらないはず。
でも今回のケースでは、やられた娼婦の気持ちによりそったから
そんな人間は許せない、と思ったんじゃないかな。
それは、死んだ奥さんを裏切る事にはならないだろう・・・、と。
(↑そこまで思ったかどうかしらんけど)。
「許されざる者」って・・・神の視点、なのかも。
YANさん、こんにちは!
この作品は私の中ではかなり微妙なんです。
正直、バンバン撃ち合う西部劇が好きだった私としては物足りなさもあり、
格調高いのはいいんだけど、(それより格調という点では低いと思う)
グラン・トリノの高みには達していないし、という感じで。
詳細を忘れているのに何ですが、多分YANさんが言ってるのと
同じような意味でしっくり来ない部分もあったような気がします。
とはいえ、わさぴょんさんの
>「今観てよかった」なんて言われたら、私も今また観てみたくなるよぉ~!
に同感です。(笑)
YANさんの記事を読んだら、観たくなりました。
何か全然違う感想になりそうな気もする。
私の疑問に答えてくれてありがとう~
「犯罪」という当たり障りのない言葉にしたのは、
一度送信した時スパムコメントとしてハネられちゃったから、
「殺し」がダメだったんだと思って「犯罪」に変えたんだけど、
わさぴょんさんが書けてるのを見ると、違う事でひっかかってたのか・・
そうね、あの時代のカウボーイにとって賞金稼ぎは犯罪という
意識はなかったかもしれない。今の時代の感覚とは違うよね。
ただの人殺しならやらないというのは、わさぴょんさんの言う通りだと思うわ。
主人公だけじゃなく登場人物みんなに悪の部分があるんですよ。
人間みんながどこかしら「許されざる者」と言っているようで、
そう考えると神の視点かもしれませんね。
わさぴょんさんも機会があればまた観てみて~
こんにちは!
これは、西部劇として見たら、物足りないでしょうね。
悪を倒して爽快っていうのとは違うし、
西部劇の定番をひっくり返すような事ばかり出てくるし~
賞金のかかった目当ての人物を仕留めたのに苦さを感じるんだもんね。
強い者についていく物書きの役割も、どこか象徴的でしたね。
武勇伝(=西部劇)なんて真実とは違って話がかなり誇張されてると言いたげでした。
だけど、終着点の「グラン・トリノ」を知った事で、
そちらの方向へ行こうとしてた作品だったんだ~と分かって、
ああそうだったのか~と飲み込める感じがありましたよ。
(全部にしっくり来たわけじゃないんだけど)
そういう意味で、今観てよかったと思ったわけです。
CDさんも違う感想が出てくるんじゃないかなあ。
感動作品でしたよ~ぉ☆オススメ
Mデイモン目当てで観たのだけど今更ながらイーストウッド監督は人間ドラマの天才ですね!
実は「ダーティーハリー4」と「ルーキー」を劇場鑑賞してスキじゃなくて本作アカデミー作品なのに未見
今度レンタルして見ようカナ~?
西部劇は苦手
監督作品で好きなのは「パーフェクト・ワールド」最高!
Kコスナーがかっこいいしラスト泣ける(〒_〒)
若い頃は長身でワイルドな男前イーストウッドよりも熟年になって人間ドラマを生み出す監督の方が素敵です☆
おおっ、インビクタス行ってきたんですね!
森子さんがそんなに感動したなら、私も早く観たいなあ~
マットとモーガン・フリーマンの共演も期待できそうだし。
でも、しばらく用事と仕事で忙しいのよね・・・
「パーフェクト・ワールド」子供と逃げるの、ありましたね~
そうっか、西部劇が苦手だと、「許されざる者」も楽しめないかも・・・
イーストウッドの若い頃の作品はそれほど観てないんですよ。
あの頃はこんなにすごい監督になるとは思ってなかったなあ。
西部劇はあまり好きなジャンルではないのですが、
勧善懲悪ではない重厚な人間ドラマに仕立て上げていたのは
さすがイーストウッド監督だなぁと思いました。
「許す」も「許さない」も自分次第ですね。
ウィルはまた自分を「許さず」生きていくのだろうと思いました・・・都合良過ぎですかね^^
こんにちは!
それまでの娯楽的な西部劇とは一線を画してましたね。
イーストウッドにとって最後の西部劇で、
暴力を否定する重厚なメッセージがありました。
私も、ウィルは自分を許さずに生きていくと思いますよ。
ずっと自分が許されざる者だという自覚は消えないでしょうね。
YANさん、こんばんわ。
この映画がグラン・トリノへ至る過程、ってのは、
なるほどと思いました。確かにそんな感じですね。
マニーは、結局また犯罪に手を染めるのだけれど、
その犯罪の空しさや恐ろしさをよく知っていて、
自身が許されざる者であることを十分自覚していると、
思いました。それは、殺人を犯した若いキッドも同様。
それでも生活苦と子供の為と、相手を殺す正当な理由
(顔を切り刻んだ事)で、
再びその手を汚してしまうのは、確かにいただけませんが、、、、
殺人の空しさを知る者と知らない者では、
その後の人生も変わるのかも知れません。
それじゃ、また。
こんにちは!
暴力の連鎖を止めるまではいかないけれど、
暴力を否定している作品でしたね。
ヤンさんもグラン・トリノへ至る過程っていうの、
同意してくれて、うれしいです(^▽^)
マニーはきっと、これを最後の賞金稼ぎにしようと決めて
子供のために心を鬼にして決行したんでしょうね。
でもそれなら友人を巻き込まないで欲しかったなあ。
やっぱり心情的に理解出来ない部分があります・・・(^^;
ただ、空しい殺人の後、マニーは本当に真面目に地道に
生きていったんだと、それだけは思いますよね。
邦画の謙さん(皆殺しは官軍がやってた~っていう肯定も否定もしない描写があった)と違って、マニーは、実際「卑劣で凶悪な犯罪者」だった過去があり、
誰よりも暴力に訴える事の恐ろしさや悲劇をよく知っていたんだと思います
それでもなお、暴力に訴えるのは、やはり「人間はそう簡単には変わらない」ものであり、自分自身「許されざる者」であることを十分自覚しているからに他ならないと思います。
その上でのラストの酒場シーンですから、こりゃ、もう、痺れるー!でしたよ。
時代だけでいえば賞金稼ぎ自体はたくさんいたと思いますが、
本当に人を殺せるガンマンというのは、ほとんどいなかったと思います
ジーン・ハックマンがいうところの「冷静さ」がなければ、目の前にいても弾は当たらないというのがありましたが、実際主人公特性のようにあの数を目の前にしてもマニーには一発も弾は当たらず、こちらの撃つ弾は当たるというのは、相当の覚悟と冷静さ正確無比な技術力があったということでしょうね
だからこそ、ラストシーンのみなの目に映る畏怖の表情が際立つのです
だからこそ、雨の中、「皆殺しにするぞ」と叫び ゆっくりと去るマニーの後姿に痺れちゃうんですよね
こんにちは!
邦画のほうは、謙さんが本当は良い人みたいな設定や
アイヌの事とか余分なものがあって、作品を邪魔してましたよね~(^^;
マニーは犯罪者だった若い時とは違って、
自分が許されざる者であるという自覚もあり、
犯罪は非道で恐ろしいものと分かった上でまた暴力に訴える。
相手は悪人だという理由はあるんですけどね。
そこは感情の爆発があって興奮するクライマックスシーンとなってました。
でも最後の最後に残ったのは虚無感でしたね~
苦さと痛さが感じられて、
普通の西部劇のように爽快ではなかったです。
実際、昔の銃には正確性があまり無かったようですよ。
だから弾が当たらないのがリアルな描写なんだと思います。
主人公が撃たれずにいるのは映画の常套だけど(^^;
マニーは昔から腕利きで有名で技術を持っていたでしょうから
ラストシーンは痺れるような感覚になりますよね。
Comment:
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1992年制作 米
監督:クリント・イーストウッド
≪キャッチコピー≫
『最後の西部劇』
≪ストーリー≫
ある町で一人の娼婦が客に顔を切り刻まれる事件が起こる。
町の保安官は...
【概略】
かつて悪名を馳せていたマニーは、今は農夫としてひっそり暮らしていた。そんな彼に、若いガンマンが賞金稼ぎの話を持ち掛け…。
西部劇
「さもないと皆殺しにするぞ!」 痺れるー!!!
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