潜水服は蝶の夢を見る
2009-07-28(Tue)
全身麻痺となり自由を奪われた男が
潜水服を脱ぎ捨て蝶になる・・・
とてもいい作品です。

監督:ジュリアン・シュナーベル
製作:2007年 フランス・アメリカ
出演:*マチュー・アマルリック *エマニュエル・セニエ *マリ=ジョゼ・クローズ
ぼくは生きている。話せず、身体は動かせないが、
確実に生きている。病気を扱った作品はあまり観る気になれなくて避けてましたが、
「ヤング@ハート」のお年寄りに背中を押されて
やっと観てみようかと腰を上げました。
働き盛り、それもELLE編集長という華やかで活気のある仕事を
していた人が、突然病に倒れ身体の自由を奪われてしまう。
ロックトイン・シンドローム(閉じ込め症候群)という病名で、
左目以外は麻痺して動きません。
その心情は潜水服を着て深い海に沈んでいくシーンで
表されているんだけど、主人公ジャン=ドーの
圧迫されて重苦しい状況がよく分かります。
彼の苦しみは他人事じゃない気がして辛かったです。
前半はジャン=ドーが見ているままの世界のみを
切り取った映像で進んでいきます。
狭い視野、視線の動き、涙・・・
それと共に、過去の思い出や想像の世界を表現したものは、
とても美しくて詩的なんですよね。
ほぼ全体が主人公の思いを映像化したものでした。周囲の人達の励ましや愛情もあって、ジャン=ドーは
自分を憐れむ事を止めます。
現状を受け入れる。 それが人には一番難しい。でも、受け入れた時、一段上の高みから達観でき、
心が軽くなり、世界が広がっていくんですね。ジャン=ドーは、自分に残された動く左目と想像力と記憶で、
潜水服から抜け出し蝶のように羽ばたこうとします。
「E・S・A・R・I・N」とアルファベットを読み上げてもらい、
まばたきだけで言葉を綴っていく作業は、
見ていても本当に気の遠くなるものだと思いました。
ジャン=ドーも目が疲れるだろうけど、
何度もアルファベットを読み上げる言語療法士や
クロードには頭が下がりました。
しかし、本作に出てくるような手厚い看護ですが、
日本にそんな事をやってくれる病院がどこに
あるんだろうと思ってしまった。
ジャン=ドーがELLE編集長で経済的に恵まれていて、
最高の病院で献身的に世話をしてもらえた事は
人間性を失わずにおれた理由の一つになるでしょうね~
こんな生々しいお金の話は、この感動作には似合わないかな(^_^;
ジャン=ドー自身の
不屈の精神に目を向けなきゃいけませんね。
彼は野心家で皮肉屋と言うだけあって、
心の中のコメントもシニカルで面白いです。
どんな時でもユーモアを忘れない人だから、
過酷な状況にあっても諦めずにおれたんでしょうね。
身体は不自由でも精神の自由は失くしませんでした。
その自由な人柄を正直に伝えるためか分かりませんが、
愛人とのやりとりは不愉快でしたね。
一度も見舞いに来ない愛人に対して、
見舞いに来た元妻の前で、愛の言葉をよく言えたものだね。
好きなものは好き、そんな割り切りが出来る人なので、
辛い思いも断ち切ってこれたのかもしれません。
逆に父親からの電話のシーンは涙がこぼれました。
現状を受け入れ、最後まで精神の自由を失わず、
自分らしく生き抜いたジャン=ドー。
実話の重みからは学ぶものがありました。
テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画
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コメント
右目を閉じられるシーンは、すんごくツラかったです。
どんだけ絶望的だったか・・・
どれだけ叫んでも伝わらないなんてねぇ・・・
きっと土中の棺おけの中で「俺は生きてるぞー!!!」って
叫ぶ時と同じ様な気持ちなんだろうな・・・
(土中の棺おけ内で叫んだ事あるのか。と自分にツッコミ)
元気な時のジャン・ドーがまた小じゃれたイイ男で
そのギャップが輪をかけて切なかったですねぇ。
しかし、そうか、彼が献身的な治療&最高のスタッフに恵まれたのも
カネと権力(一流雑誌の編集長という肩書き)のチカラが大きいかも?
おお、同じ時期でしたね!
私も目を閉じるってどういう事!?ってゾッとしましたよ。
せっかく見える目なのに、乾かないように閉じなきゃいけないとは・・・
縫う映像がこれまたリアルな感じでね~いやだったわ。
テレビを消された時も「ちょっと~」って思ったり。
たかがテレビでも自分の思うようにならないなんてやっぱり悲しいよね。
あれ、わさぴょんさんちは火葬なし?(≧ε≦)
元気な時は、さすがELLE編集長という感じでシャレてましたね~
父親と同じ伊達男で、モテたんでしょうね。
その時に周囲から好かれていたのは、財産だったかも。
ヒジョーに現実的だけど、金と権力の影響はあったんじゃないかなあ。
どちらにしても、あそこまでの献身的な介護がなければ、
ジャン=ドーだって本を出せずに終わってたでしょう。
どーもー、YANさん☆
こちらの作品は以前に予告篇を見たことがあります。
20万回のまばたきで自伝を綴った実話なんですよね。
重い感じの内容にも見えますが、“生きる”という事を教えてくれそうですね。
最近はあまり映画観賞してませんが、レンタルリストに加えておきますね!
ところでYANさん、そちらの気象状況はいかがですか?
なんか全国的に異常な気候が続いてますので
くれぐれも気をつけてくださいね。
>身体は不自由でも精神の自由は失くしませんでした。
がタイトルに込められていましたね。
確かに経済的に恵まれ献身的な介護を受けられたことは大きいかもしれませんが、
あの重病でも「生きたい」と願うことができるジャン=ドーの生命力に感銘を受けました。
YANさん、こんにちは!
この映画、フランスの海の風景も綺麗で、看護婦さんたちや回りの女性も優しく美しい人が揃っており、重~いテーマなのに、映画全体から受ける印象の色合いが明るい感じでした。
でね、今、この映画を振り返って見て、一番私が印象に残ってることっていうのが
>手厚い看護ですが、日本にそんな事をやってくれる病院がどこにあるんだろうと思ってしまった
って部分だったりするんですよ・・・・。
もっと、主人公の気持ちだったり、なんなりを覚えているのかと思いきや、日本の通常の医療ではここまでのは無理でしょう・・・はぁ~~っ・・・って・・・。
PS 私が住んでるのは神奈川県の田舎です(^^ゞ コメダは東京都内のどまんなかよりも、ちょっと郊外から進出してるみたいで。私のもよりの場所は、関東進出の際、結構早く建ったんです。昔から名古屋の喫茶店の事はよく知っていたので、こっちに出来たのが、すんごい嬉しかったです~。(←待ちかまえていて、open初日に行きましたw)
YANさん、こんにちは!
この作品は、「海を飛ぶ夢」を観て以来、ずっと観ようと思ってるんですが、
YANさん同様どうも手に取る気にならず、まだ観てません。
観ればきっと感動するんでしょうけどね。
私もヤング@ハートを観てから鑑賞しようかな。
こんにちは!
これが実話だとは驚いてしまいますよ。
なるべく重さは排除して、映像の素晴らしさで進めていってる作品です。
猫人さん、最近 お忙しいんですか?
うちも子供が夏休みなのでメインのテレビを占領されたりで
思うように映画鑑賞できません。( ̄∇ ̄*)ゞ
今年はなかなか梅雨が明けなくて、毎日雨模様です。
他の地域でも集中豪雨や竜巻があって、ほんと異常ですよね~
猫人さんのほうも、何の被害もありませんように★
こんにちは!
やっぱり、大切なのは精神なんですね。
精神の有り様がその人の人間性を作っていくんでしょうね。
「生きたい」意志があっても、介護体制が悪くて
寝かされているだけの状態が長かったら、
その意志もくじけてくるんじゃないかなあと、
チラッと思ったもので、現実的な事を書いてしまいました。
でもジャン=ドーは、「生が与えられているから生きている」
みたいな、自然体でいる感じを私は受けました。
あの状態で自然体ってすごい事です!
いろんな面で感銘を受ける作品ですよね。
こんにちは!
風景も美しかったけど、女性がどの人も皆すごく美しかったですね~
(誰が誰だかゴチャゴチャになりましたが・・・)
美人から毎日優しくされたら、もうちょっと生きようって思います(^_^;
雰囲気が明るいのは、主人公のユーモア溢れる人柄もありましたね。
latifaさんも、手厚い看護の事、印象に残りましたか。
やっぱりそれは家族の介護問題に直面する女性ならではの視点ですよね。
日本の通常医療では、ほんと見た事ないですよ。
もし日本で、誰もがあのような看護・介護が受けられるなら、
安心して年を重ねることができるでしょう。
日本中、老後の不安がなくなります。
コメダは関東に進出したと聞いてましたが、神奈川にもあるんですね!
latifaさん、名古屋の事情通だわ~
待ち構えてオープン初日に行ったとは、すんごいコメダ・ファン。
名古屋人としてお礼を申し上げたいです。
これからもコメダをご贔屓に(^-^)
こんにちは!
闘病の話って、他人事としては見られなくて
胸が苦しくなるので、積極的に観る気が起きないんですよね。。。
一般的には、「海を飛ぶ夢」は、死を望むから後ろ向き(?)で
本作は前向きで明るい雰囲気と言われてます。
でも、不自由な期間の長さや、介護の待遇を考えると、
私はラモンに同情したくなっちゃうかな。
ヤング@ハートは、楽しくて素直に元気がもらえる作品ですよ!
YANさんこんばんは~
ヤング@ハートは未見なので、YANさんの感想も読まないようにしていますが
映画ってやっぱりいいよねー
いろんな機会を与えてくれて・・・・
この作品ですが、そうそう実話には厳しい私もあまりお金の事に触れないくらい、現実味があって良かったです
身体が不自由なのに心は健康のままでいられるっていうのは、凄く大変なことだと思います
周りの方々にも頭がさがりますね
日本の介護分野も、人手や技術が向上していけばいいけれど・・・
日本人には無理かなーって思っちゃうな
そんな気がする
コメトラありがとうございますー!
この映画は良かったですねえ。はじめは自分目線から行く描き方も新鮮で。
女性が綺麗なのも、主人公の願望がまじっていた(?)のかもしれません。プレイボーイでユーモア好きな人が、自分の置かれた状況に対処していく、さまざまなこと…。
自分がそうなったら、どうなるかと、ずっと考えましたが、…実際問題だと、そんな医療を受けられるお金がないよね。。。
こんにちは!
映画によって、物の見方が変わったり、教えられたり、
影響を受ける事ってあるもんですよね~
「ヤング@ハート」は特にネタバレしてないからご安心を。
確かに、実話物に厳しい雨里さんが、今回は高評価ですよね。
現実味って言われると、日本の現状とは違うなあと思うけど、
主人公が健康な心を持ち続け自然体だったのはすごいし、
周囲の方々も仕事以上の愛情を持って接していて、
素晴らしいと思いました。
日本では在宅介護が基本だと政府は言うとります。
病院や施設での手厚い介護だと、お金がかかるし人手不足だし。
いつまでも、元気で過ごさないとね!そうありたい。。。
前半の主人公目線の撮り方は、いろいろ工夫されてましたね!
周囲が彼からどう見えているのか、体感できる映像でした。
接する女性の美貌も、主人公の想像力でかなり膨らませていたのかな?
美人に囲まれて、闘病中も幸せだったという事かも。
誰だって病気になりたくないけど、自分がその立場に立たされる事も
ないとは言い切れないので、不安になりますよね。
自分自身の精神の問題だけじゃなく、
誰にどんな介護をしてもらうかによって、
心のモチベーションが変わったりしますからね。
(また現実的な事、言っちゃったかな(^_^;)
お涙頂戴だけのストーリーでなかったのに好感を感じました。
音楽の使い方も好きな感じで
エンドクレジットの映像は逆送りだった気が?
想像力さえあれば、こんな状態でも生きていける。
それが素晴らしいけど…やっぱり人は何か表現したい。
YANさん、こんばんわ。
遂にご覧になったんですね。「とてもいい作品です」という感想に、なんだか、私も嬉しい気分です。
確かに悲惨なシーンもありますが、それ以上に美しいシーンやユーモアのあるシーンが沢山あり、ジャンという人間を上手に表現できているのではないかと思えました。ただ確かに、この映画が明るいのは経済的な不安などが無いためですよね。その辺りを描いていたいのも、この映画をおとぎ話の雰囲気に仕上げたかったからのようにも感じました。
もうすでに、おぼろげながらの記憶ですが、確か、恋人と旅行に行って高価な像を買わされて、しかし、その像は実は、そんなに価値があるものではなかった、という逸話がありませんでしたっけ?違う映画だったかな?そしてラストは確か逆まわしで写す自然でしたっけ? 実は、なんだか、そんな変なシーンも印象的な映画でした。
それじゃ、また。
今年の夏は雨ばかり降ってますね~ぇ(|||_|||)
実話の感動作と聞いて期待してたのだけど…愛人関係に不快感がいっぱいになってしまった↓↓↓
やり手の男が突然の難病に倒れるショックは莫大だろう
健康な体に感謝しなくてはね!
おすぎのオススメ「君のためなら千回でも」泣けますよ(;_;)
父親との電話のシーンでは泣けましたが、
それ以外は、涙を誘うような演出が一切なかったですね。
主人公の人柄で明るい作風になっていたんでしょうね。
エンドクレジットの逆回しは印象的でしたね~★
絶望して落胆した時に崩れ落ちた岸壁が、
最後に元に戻るんだもんね~あれは主人公の心象風景ですよね。
表現したいという気持ちは前向きだから生まれてくるものだし、
彼には表現できる機会もあって、それが日々の励みになったでしょうね。
こんにちは!
この作品を手にするのに、ちょっと時間がかかりましたが、
観て良かったと思いましたよ。
そう、闘病記の印象よりも、
ジャン=ドーというユーモア溢れる不屈の人間を描いた作品
の印象がありますね。
なるほど~おとぎ話ね~
想像力で作った本なので、おとぎ話風にするのが合っていたかも。
恋人と旅行に行ったシーン、ありましたよ~
聖地で聖母マリアの像を女性に買わされるんです。
でも、信仰心のないジャンはベッド脇のマリア像が
鬱陶しくて、夜一人で外に出てしまうんです。
過去の思い出もおとぎ話風で心に残る映像でしたね。
こんにちは!
こちら東海地方もまだ梅雨明けしてないんですよ!
土日ずっと雨でイベントも楽しみ半減ですよ。
これ、愛人関係はちょっとねえ~と思いました。
事実をきちんと見せている所には逆に感心したけど(≧ε≦)
誰でも難病で倒れたくないですよ。
健康な方は、ほんと感謝して下さい。
泣ける映画は、ほんとは苦手なんですよ、私。
おすぎじゃなくて森子さんのお勧めなら覚えておきます。(^^)
こんにちは!ごぶさたしておりました。
ようやく自分のブログ再開でき始めたので、あいさつ回り(?)しようと思いつつ・・・YANさんに先にコメントいただいてしまいました。(^へ^;)
この映画。
出だしがとても印象的でした。主人公の目をカメラに見立てた映像。何が起きたのかわからない主人公の恐怖感が直に伝わってきて、ブルっときました。
でも、YANさん同様、愛人とのあれには呆れましたね。しかも奥さんのが美人だし、子どもたちは可愛いし!
まあ、いろいろあったんだろうけれど、何だかやけに腹が立ってしまった映画でもありました。w
こんにちは!お久しぶりですね。
おめでたいお知らせを知って、とてもうれしく思いました♪
映画のほう、主人公目線のカメラワークは見事な工夫でしたよね。
こちらが話しかけているのに無視される・・・
声が出てない事や動けない事が分かるあたり、ショックでした。
涙を流した時に画面が曇るのも悲しかった・・・
奥さんと子供がきちんとお見舞いに来てくれてるのに、
見舞いにも来ない愛人を愛おしく思うってどういう事!って感じー
その愛人も、前のあなたがいいとか勝手な事を言ってませんでした?
変わり果てたジャンを見たくないなんて、本当の愛情じゃないですよね!
ほんと、思い返すと腹が立ってきました。( ̄∇ ̄*)ゞ
映像や手法などは斬新で、自分がジャンになった様な気持ちで画面を見たし、まぶたを1回、2回とまばたきする様子も体に伝わって来る感じで...
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2007 フラン...
素晴らしい映画だった。早くも今年のマイ・ベスト候補は間違いない。
原題は「潜水服と蝶」だが、日本語タイトルも悪くない。映画ファンなら...
体の自由を失った男。
しかし、まだ心の自由は失われてはいない。
人間の尊厳とは、他人にどう扱われ、
どのように思われることに依存す...