ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
2009-06-13(Sat)
石油採掘で富と権力を手にした男の生き様を描いた一大叙事詩。
重苦しい上に、2時間40分もあるので
精神的に疲れる作品だけれども、
妙に心に残りました。

監督:ポール・ト-マス・アンダーソン
製作:2007年 アメリカ
出演:*ダニエル・デイ=ルイス *ポール・ダノ *ケヴィン・J・オコナー
欲望と言う名の黒い血が彼を《怪物》に変えていく・・・
タイトルを直訳すると「(そこに)血があるだろう」ですね。
血とは、石油・・・黒い血。
ドクドクと噴き上げてくる石油は大地の血に見えます。
血とは、家族・・・血縁
この部分で唯一、主人公は血の通った人間らしさを見せてくれます。
血とは、邪心・・・悪意・欲望など激しく醜い感情。
血とは、ラストに流れる血・・・とことんやれば行き着くのは破滅。
序盤、プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス←すごい役者だ)が
たった一人で穴を掘る地道な作業を繰り返しています。
ケガをしてもめげることなく、さらに仕事を広げ、
とうとう石油を掘り当てるまでを淡々を映し出していきます。
湧いてきた石油を溜めた黒い池を上から撮った俯瞰図と、
ずっと流れる不快な弦楽器の不協和音!!
石油を掘り当てるのは、アメリカン・ドリームなのに、
これが幸せをもたらすようには、全く見えない!
この先、プレインヴューがたどる人生を暗示するように、
ものすごく不安をかき立てる不穏な空気ばかりが流れています。
彼は、人を嫌悪し信用しない徹底した個人主義の男です。
人の最悪な部分が分ると言うのは、
自分が最悪な部分を持っているから、
直感的に感じ取れるんでしょう。
ネタバレあります
だから、牧師のイーライとは常に確執を生じました。
プレインヴューは資本社会での成功を欲し、
イーライは宗教社会での成功を欲しました。
二人とも胡散臭くて、狂気すら感じさせるんですよ。
互いが癇に障るのも無理はないでしょう。
特に自分の力だけを信じて生きてきたプレインヴューにとっては、
「イエスの血の力は奇跡を行う」と実体のない力を崇め、
自分が神に成り代わろうとするような男、
その実、お金にも執着するような男は
嫌悪の対象でしかありませんでした。
だけど、利権が絡むと、彼は相手の言いなりにもなります。
教会でさらし者になり、イーライに殴られても、
屈辱を受けても、耐えた。。。
自分の利益に繋がるなら、何でもしました。
自分の欲求を満たすためなら、手を血に染める事もしました。
資本主義で成功するって、昔も今も、どんな手を使っても
自分だけが這い上がるという事だと言いたいのかもしれません。
こんな怪物のようになっていった男でも、
家族というものには夢を抱いていたんですね~
ただし、彼の理想とする家族とは、
自分に無条件に従って付いてきてくれる者の事。
H.W.は事故死した作業員の遺児だけど、
彼を大切にし愛情をかけていたのは偽りではなかったと思います。
可愛いH.W.とのシーンだけは、この映画の中でホッとできたなあ~
でも、油井爆発事故により、H.W.が聴力を失ってからは、
少しずつ親子関係が変化していきます。
自分の言う事が聞けないH.W.にプレインヴューは苛立ち、
H.W.も声は出せるはずなのに一切言葉を発しなくなって、
自分の殻にこもってしまいます。
そんな時、腹違いの弟だと言うヘンリーが現れ、
H.W.の時と同じように交渉の場に連れていくようになります。
自分の家族を築きたかったプレインヴューだけど、
ヘンリーが偽者だと見破ると、簡単に亡き者にしてしまう。
H.W.が大人になって独立を言い出した途端、
彼は烈火のごとく怒り、とことん傷付けます。
お前は私に対する憎悪・悪意を築き上げてきたと非難しますが、
そのような悪感情は全て、自分がいつも抱えてきたものです。
私は、心の中で、息子が自立し易いように思いやりで
突き放しているならいいのに・・・と思ったけど、
何度も「カゴの中のろくでなし」と繰り返すプレインヴューは、
実際はもう鬼でしかなかった。。。!
富と権力は持てても、家族は持てなかった彼は、
一番恐れていた孤独に追い込まれ、酒浸りになります。
そこへやって来た、因縁のイーライに対しても、
彼は執拗に攻撃します。
力関係ではプレインヴューの方が勝っているのに、
どれだけ口汚く罵ってもまだ不足なのか、
うんざりする程のいやらしさで相手を打ちのめすんですね。
最後には血を流すはめに・・
行き着く所まで行かないと、自分の邪心に満ちた言動を
抑える事ができなくなってしまった。
大きくなり過ぎた欲望のために、
人を傷つけ、自らをも破滅に追い込んでしまった。
地道な努力から始まったのに、愚かさに食い尽くされました。
成功の裏側には、こんな話はよくあるのかもしれません。
#2007年アカデミー賞主演男優賞・撮影賞 受賞
重苦しい上に、2時間40分もあるので
精神的に疲れる作品だけれども、
妙に心に残りました。

監督:ポール・ト-マス・アンダーソン
製作:2007年 アメリカ
出演:*ダニエル・デイ=ルイス *ポール・ダノ *ケヴィン・J・オコナー
欲望と言う名の黒い血が彼を《怪物》に変えていく・・・
タイトルを直訳すると「(そこに)血があるだろう」ですね。
血とは、石油・・・黒い血。
ドクドクと噴き上げてくる石油は大地の血に見えます。
血とは、家族・・・血縁
この部分で唯一、主人公は血の通った人間らしさを見せてくれます。
血とは、邪心・・・悪意・欲望など激しく醜い感情。
血とは、ラストに流れる血・・・とことんやれば行き着くのは破滅。
序盤、プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス←すごい役者だ)が
たった一人で穴を掘る地道な作業を繰り返しています。
ケガをしてもめげることなく、さらに仕事を広げ、
とうとう石油を掘り当てるまでを淡々を映し出していきます。
湧いてきた石油を溜めた黒い池を上から撮った俯瞰図と、
ずっと流れる不快な弦楽器の不協和音!!
石油を掘り当てるのは、アメリカン・ドリームなのに、
これが幸せをもたらすようには、全く見えない!
この先、プレインヴューがたどる人生を暗示するように、
ものすごく不安をかき立てる不穏な空気ばかりが流れています。
彼は、人を嫌悪し信用しない徹底した個人主義の男です。
人の最悪な部分が分ると言うのは、
自分が最悪な部分を持っているから、
直感的に感じ取れるんでしょう。
ネタバレあります
だから、牧師のイーライとは常に確執を生じました。
プレインヴューは資本社会での成功を欲し、
イーライは宗教社会での成功を欲しました。
二人とも胡散臭くて、狂気すら感じさせるんですよ。
互いが癇に障るのも無理はないでしょう。
特に自分の力だけを信じて生きてきたプレインヴューにとっては、
「イエスの血の力は奇跡を行う」と実体のない力を崇め、
自分が神に成り代わろうとするような男、
その実、お金にも執着するような男は
嫌悪の対象でしかありませんでした。
だけど、利権が絡むと、彼は相手の言いなりにもなります。
教会でさらし者になり、イーライに殴られても、
屈辱を受けても、耐えた。。。
自分の利益に繋がるなら、何でもしました。
自分の欲求を満たすためなら、手を血に染める事もしました。
資本主義で成功するって、昔も今も、どんな手を使っても
自分だけが這い上がるという事だと言いたいのかもしれません。
こんな怪物のようになっていった男でも、
家族というものには夢を抱いていたんですね~
ただし、彼の理想とする家族とは、
自分に無条件に従って付いてきてくれる者の事。
H.W.は事故死した作業員の遺児だけど、
彼を大切にし愛情をかけていたのは偽りではなかったと思います。
可愛いH.W.とのシーンだけは、この映画の中でホッとできたなあ~
でも、油井爆発事故により、H.W.が聴力を失ってからは、
少しずつ親子関係が変化していきます。
自分の言う事が聞けないH.W.にプレインヴューは苛立ち、
H.W.も声は出せるはずなのに一切言葉を発しなくなって、
自分の殻にこもってしまいます。
そんな時、腹違いの弟だと言うヘンリーが現れ、
H.W.の時と同じように交渉の場に連れていくようになります。
自分の家族を築きたかったプレインヴューだけど、
ヘンリーが偽者だと見破ると、簡単に亡き者にしてしまう。
H.W.が大人になって独立を言い出した途端、
彼は烈火のごとく怒り、とことん傷付けます。
お前は私に対する憎悪・悪意を築き上げてきたと非難しますが、
そのような悪感情は全て、自分がいつも抱えてきたものです。
私は、心の中で、息子が自立し易いように思いやりで
突き放しているならいいのに・・・と思ったけど、
何度も「カゴの中のろくでなし」と繰り返すプレインヴューは、
実際はもう鬼でしかなかった。。。!
富と権力は持てても、家族は持てなかった彼は、
一番恐れていた孤独に追い込まれ、酒浸りになります。
そこへやって来た、因縁のイーライに対しても、
彼は執拗に攻撃します。
力関係ではプレインヴューの方が勝っているのに、
どれだけ口汚く罵ってもまだ不足なのか、
うんざりする程のいやらしさで相手を打ちのめすんですね。
最後には血を流すはめに・・
行き着く所まで行かないと、自分の邪心に満ちた言動を
抑える事ができなくなってしまった。
大きくなり過ぎた欲望のために、
人を傷つけ、自らをも破滅に追い込んでしまった。
地道な努力から始まったのに、愚かさに食い尽くされました。
成功の裏側には、こんな話はよくあるのかもしれません。
#2007年アカデミー賞主演男優賞・撮影賞 受賞