ヒトラーの贋札
2008-11-23(Sun)
2007年度アカデミー賞外国語映画賞受賞作品です。
ここ3年間、外国語映画賞は私の心にガツンときた作品が続いたので、
今作も観てみたんですが、やはりハズレてませんでしたよ。
これまでの3本に比べると、ちょっと印象が弱かったけど。
参考までに・・・
2006年度 「善き人のためのソナタ」(感想はこちら)
2005年度 「ツォツィ」(感想はこちら)
2004年度 「海を飛ぶ夢」(感想はこちら)

監督:ステファン・ルツォヴィツキー
製作:2007年 ドイツ・オーストリア
原作:アドルフ・ブルガー「ヒトラーの贋札 悪魔の仕事場」
出演:*カール・マルコヴィクス *アウグスト・ディール
完璧な贋札。
それは俺たちの命を救うのか。それとも奪うのかーー
第2次世界大戦中のドイツ。
ナチスの紙幣贋造を強要されたユダヤ人達のドラマです。
英米の経済を崩壊させる目的で
「ベルンハルト作戦」と言う、国家ぐるみの贋札作りが、
ザクセンハウゼン強制収容所の一画で極秘に行われていました。
これは、実際に計画に携わっていたユダヤ人が書いた原作があり、
つまり実話が基なんですね。その実態には驚く物がありました。
印刷技師、画家、医師など、技術のあるユダヤ人のみが集められ、
他とは格段の差がある待遇を受けました。
白いシーツの柔らかいベッドに、石鹸にお湯のシャワー。
それまで虫ケラのように扱われてきた生活とは大違い。
とは言え、彼らは完璧な贋札を完成させなければ、殺されます。
また、贋札が完成しても用が無くなれば、殺されます。
そして終戦となれば秘密保持のため、殺されます。
どう転んでも、いつかは殺されるという、
常に死が目の前にある状況なんです。
だから、罪悪感を感じつつも、主人公サリーは、
仲間達をかばいながら、必死に生き長らえる道を探しました。
だけど、反ナチの信念を守りたいブルガーは、
贋ドル札作りをわざとサボタージュする・・・
贋札を作れば、ナチスに加担し、同胞や家族を
ますます苦しめ続ける事を意味するからです。
彼らが優遇されている間でも、
家族はアウシュビッツで殺され、
同胞は壁一枚隔てた場所で殺されていたのだから。
そのあたりのジレンマに葛藤するユダヤ人達の姿が、
とても痛々しかった。
どの人達の気持ちや行動にも、少しずつ共感できるものがあり、
何が正しいと断言できない複雑な思いで、苦しくなりましたよ。
正直言うと、ブルガーの正義が青い理想に思える時もありました。
サリーの「今日の銃殺より明日のガス室の方がいい」に、
そりゃそうでしょうと思ったりして。
目の前の仲間を危険にさらしてまでも・・・と感じたけど、
贋札の完成が遅れたためにドイツの敗戦色が濃くなった、
と言われているのを聞くと、
あの信念の強さは貴重だったんだと思えました。
それに彼も生にこだわっていたのは同じだったし。
後で知って驚いたのは、原作はこのブルガーの方だったんですね。
原作は知りませんが、もしこの正義感のブルガーが主人公だったら、
また全然違った作品になった事でしょう。
犯罪人だった男のサリーを主人公にする事で、
正義を客観的に捉え、状況によって出てくる 人の善良な面や
邪悪な面をも描き、(サリーやドイツ人ヘルツォークなど)
様々な人の思いを交錯させるという、脚本の巧みさを感じました。
ラストでサリーはカジノで贋札を使い果たします。
サリーにとって、いやな思い出、卑しい紙きれ、ヒトラーの贋札。
それを全て捨て去った彼の後姿に
哀しさや空しさが良く出てました。
結末をオープニングに持ってくる作品はよくあります。
この主人公が何とか生き延びて大金(贋札)を手にするんだなと
最初から分かっていたせいか、
常に死の恐怖に脅かされるユダヤ人のドラマなのに、
安心感が、私の片隅にあった事は確かでした。
それだから観ていられたと言えるけど、
結末を先に持ってこなかった方が、良かったような。
ここ3年間、外国語映画賞は私の心にガツンときた作品が続いたので、
今作も観てみたんですが、やはりハズレてませんでしたよ。
これまでの3本に比べると、ちょっと印象が弱かったけど。
参考までに・・・
2006年度 「善き人のためのソナタ」(感想はこちら)
2005年度 「ツォツィ」(感想はこちら)
2004年度 「海を飛ぶ夢」(感想はこちら)

監督:ステファン・ルツォヴィツキー
製作:2007年 ドイツ・オーストリア
原作:アドルフ・ブルガー「ヒトラーの贋札 悪魔の仕事場」
出演:*カール・マルコヴィクス *アウグスト・ディール
完璧な贋札。
それは俺たちの命を救うのか。それとも奪うのかーー
第2次世界大戦中のドイツ。
ナチスの紙幣贋造を強要されたユダヤ人達のドラマです。
英米の経済を崩壊させる目的で
「ベルンハルト作戦」と言う、国家ぐるみの贋札作りが、
ザクセンハウゼン強制収容所の一画で極秘に行われていました。
これは、実際に計画に携わっていたユダヤ人が書いた原作があり、
つまり実話が基なんですね。その実態には驚く物がありました。
印刷技師、画家、医師など、技術のあるユダヤ人のみが集められ、
他とは格段の差がある待遇を受けました。
白いシーツの柔らかいベッドに、石鹸にお湯のシャワー。
それまで虫ケラのように扱われてきた生活とは大違い。
とは言え、彼らは完璧な贋札を完成させなければ、殺されます。
また、贋札が完成しても用が無くなれば、殺されます。
そして終戦となれば秘密保持のため、殺されます。
どう転んでも、いつかは殺されるという、
常に死が目の前にある状況なんです。
だから、罪悪感を感じつつも、主人公サリーは、
仲間達をかばいながら、必死に生き長らえる道を探しました。
だけど、反ナチの信念を守りたいブルガーは、
贋ドル札作りをわざとサボタージュする・・・
贋札を作れば、ナチスに加担し、同胞や家族を
ますます苦しめ続ける事を意味するからです。
彼らが優遇されている間でも、
家族はアウシュビッツで殺され、
同胞は壁一枚隔てた場所で殺されていたのだから。
そのあたりのジレンマに葛藤するユダヤ人達の姿が、
とても痛々しかった。
どの人達の気持ちや行動にも、少しずつ共感できるものがあり、
何が正しいと断言できない複雑な思いで、苦しくなりましたよ。
正直言うと、ブルガーの正義が青い理想に思える時もありました。
サリーの「今日の銃殺より明日のガス室の方がいい」に、
そりゃそうでしょうと思ったりして。
目の前の仲間を危険にさらしてまでも・・・と感じたけど、
贋札の完成が遅れたためにドイツの敗戦色が濃くなった、
と言われているのを聞くと、
あの信念の強さは貴重だったんだと思えました。
それに彼も生にこだわっていたのは同じだったし。
後で知って驚いたのは、原作はこのブルガーの方だったんですね。
原作は知りませんが、もしこの正義感のブルガーが主人公だったら、
また全然違った作品になった事でしょう。
犯罪人だった男のサリーを主人公にする事で、
正義を客観的に捉え、状況によって出てくる 人の善良な面や
邪悪な面をも描き、(サリーやドイツ人ヘルツォークなど)
様々な人の思いを交錯させるという、脚本の巧みさを感じました。
ラストでサリーはカジノで贋札を使い果たします。
サリーにとって、いやな思い出、卑しい紙きれ、ヒトラーの贋札。
それを全て捨て去った彼の後姿に
哀しさや空しさが良く出てました。
結末をオープニングに持ってくる作品はよくあります。
この主人公が何とか生き延びて大金(贋札)を手にするんだなと
最初から分かっていたせいか、
常に死の恐怖に脅かされるユダヤ人のドラマなのに、
安心感が、私の片隅にあった事は確かでした。
それだから観ていられたと言えるけど、
結末を先に持ってこなかった方が、良かったような。