パンズ・ラビリンス
2008-10-10(Fri)
これまた心にズシーンとくる良い映画でした。
ダークファンタジーと聞いていたけど、
ここまでダークで、闇を強調しているとは思わなかった・・・

監督:ギレルモ・デル・トロ
製作:2006年 スペイン・メキシコ・アメリカ
出演:*イバナ・バケロ *セルジ・ロペス *マリベル・ベルドゥ
だから少女は幻想の国で、永遠の幸せを探した。1944年のスペイン。
フランコ政権下、戦争終結後も、
独裁政治に反発するレジスタンスと軍が闘いを続け、
混乱をきわめていた・・・そういう時代背景があります。
直視できない程の残酷シーンの連続です。ビダル大尉の容赦ない残虐ぶりは、
かなりグロく描かれていて、たじろいだ~。。。
その一方で、ファンタジー世界がリンクするように繰り広げられるんだけど、
こちらもおどろおどろしくて、子供から見たらかなりの恐怖!
ネタバレありですこのファンタジー部分はいろいろ解釈できます。
1、あまりにも現実が厳し過ぎて、
少女は空想の世界に逃げ込むしかなかった。
つまり、全ては少女オフェリアの想像である。
2、最初に少女が血を流して倒れているカットで始まるところから考えて、
少女の魂が肉体を離れ天に召されるまでの夢物語である。
3、森の迷宮には、心が純粋な子供だけに見える、
異界が本当に存在する。
1と2は架空の物語となるけど、3はそうではない。
これはどのようにも考えられるんだけど、どれかと言うと、
一応私には、3の本当に存在したパンが創る異界のように思えました。
もし、現実逃避の空想なら、なぜあそこまで恐怖の世界で、
厳しい試練を受けなくちゃいけないのか、しっくり来ない。
(あまり説得力がないか?)
メルセデスが、「私の母は、パンには気をつけろって」と言ってましたが、
彼女も子供の頃にパンに出会った事があるのでは?
それから、現実世界とファンタジー世界が、
ものすごく上手くリンクしているのが一番のポイントです。
一つ目の試練で、木の根元のカエルを退治しますが、
あれは胎児の象徴に見え、
その後、現実世界で母が流産しそうになります。
パンからもらったマンドラゴラのおまじないで、
実際に母は、医者も不思議がる程 回復するし、
逆にマンドラゴラを焼くと、不調をきたして倒れます。
二つ目の試練の状況は、ビダル大尉が開いた
晩餐会とよく似ています。
(ちなみにオフェリアは現実の晩餐会を見ていない)
このように、二つの世界が連動するように描かれているのが、
私が3説を取る理由だし、
この構成が見事で好きですね~(やっぱり説得力がないか?)
それにしても、オフェリアにとって、状況はあまりにも過酷・・・
まだ少女なのに、現実では孤独で悲惨だし、
異界ではパンにも責められ試され苦痛を味わって、本当に可哀想!
よく勇気を持って果敢に立ち向かっていましたよ。
唯一、メルセデスだけが母のように目を掛けてくれて、
それだけでかなり救われたと思います。
(でも、あの子守唄はホラーのように恐い・・・)この作品で要のセリフがあります。
裏切りがバレた医者が、ビダル大尉に向かって言った言葉。
「何の疑問も抱かずにひたすら従うなんて、
心のない人間にしか出来ない事」歪んだ権力に立ち向かったのは、
レジスタンスと医者とメルセデスでしたね。
そしてオフェリアが三つ目の試練で突きつけられたのも、
まさに、このセリフを試されたもの。
オフェリアは、パンにもビダルにも服従せずに
自分が正しいと思う考えで行動します。自分を犠牲にしても。それこそが正しい選択。
オフェリアは試練をクリアし、光り輝く王国へ迎え入れられます。
あまりにそれまでの闇が深く暗かったので、
王国のまばゆさがより輝いて見えました。
とっても幻想的で美しい世界でしたね~
オフェリアの肉体は無残な姿になったけど、
魂は救われたんですね!
嘘や苦痛のない世界で幸せに暮らすんだと思います。(強い願望)
でも、悲しくて涙が出てくるのはなぜだろう。
健気で利発そうなオフェリア役のイバナ・バケロが良かったなあ。
ファンタジーを絡めて、独裁政治の残酷さを描いた作品です。
#2006年アカデミー賞撮影賞・美術賞・メイクアップ賞受賞
テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画
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コメント
この作品、凄く惹かれます。
子供にしか見えない世界、あるかも?!って思えたり現実逃避?って思えたり、ラストはハッピーとは決して言えないけど、オフェリアが幸せを感じたならそれはそれで良いかな。
ズシンとくる重い作品でしたね。
私は①の解釈で観ていました。
現実とファンタジーの世界を交互にみせても
見事にリンクしていたので
違和感なく観ることができました。
ラストは①の解釈で観ていたので
すべては空想上のできごとだと思うのですが、
オフェリアが安らかに旅立ったことは間違いないかと・・・。
コメントありがとうございました。
ラブコメと、ファンタジーは苦手な私も大好きな作品です。ギレルモ・デル・トロ監督、大好きです。「ロード・オブ・ザ・リング」の続編も彼が監督、脚本みたいなのでとても楽しみです。
①~③はあんまり深く考えてませんでした。なるほど、いろいろ考えられますね。主人公の行動は逃避ではないと思うので、③かな?
TBさせていただきました。
「JFK」は映画の説以外にもいろんな説があるので、今のところは仮説を映画にした作品ですが、真に迫ってるので真実と思わせるところがすごいです。
私も、この作品にはグッと引き込まれて、
続けて2回観てしまいました。(グロい場面は飛ばして)
いろいろ考えられるように、解釈はわざと曖昧にしてあるんでしょうね!
作り手は、観客が話し合うのを楽しみにしてるんでしょ~
オフェリアの幸せは、強く願わずにはいられませんね~(;_:)
こんにちは!
とっても重くて内容の深い作品でしたね。
多分、ほとんどの方が1の解釈をされると思います。
それが一般的な見方なんでしょうね。
現実世界だけでも見応えがあったし、
ファンタジー世界だけでも幻想的で素晴らしかったし、
それがさらに上手く絡んでいて、見事でしたよね。
オフェリアの魂は、きっと幸せな世界に旅立ったと思います。
すれ違いだったようですね(^^)
今作でこれからとても注目したい監督になりました。
完結したと思っていた「ロード・オブ・・・」の続編があるんですか?
その情報にもびっくり! この作品のレベルを期待しちゃいます。
3に共感してくださる方は初めてです♪
そう、決してオフェリアは逃避せずに、自ら困難に立ち向かってましたよね。
勇気ある少女でした。
「JFK」はとても興味深く観る事ができました。
胸が痛くなるほどの戦争の怖さでしたね。ダークファンタジーという名にふさわしい作品。
私はすべて現実として見ていました。
すごく印象深いのですが、気が重くて再見する気分にならず(他に見たいものがたくさんあるからでもありますが)。
デル・トロ監督に興味をもって、すぐあとに「デビルズ・バックボーン」という映画も見ましたが、ご覧になっていなければ、これもおすすめですよ!
YANさん、こんばんわ。
美少女ファンタジー映画を期待していったら、あまりにダークで重い内容の映画でした。最初は①かと思いましたが、ファシスト批判がテーマであると考えると、③なのかな、と思えます。しかも、異世界はこの世界と強く繋がっているというというのも賛成です。現実世界での出来事が色濃く反映されているんでしょうね。
正しい選択をしたが故に奪われてしまった命。しかし、失われた命でも光り輝く世界に導かれることを思わず祈ってしまいますね。
それじゃ、また。
本当にダークなファンタジーを絡めた戦争映画でしたね。
ボーさんの去年の第3位だったんですね!
私も一年遅いけど、今年のマイベスト5には入る感じですよ。
ボーさんも現実に見えましたか。
少数派だと思ってましたが、同じ見方でうれしいです。
この監督の他の作品も、ちゃんと観てるんですね。
「デビルズ・・」はホラーかな?覚えておきますね~!
イバナ・バケロは知的な美少女で、
この映画の世界にとても合ってましたよね。
私も最初は1かと思ったんですが、最終的には3かなと。
現実のファシズムが異界にも反映されているというのは、
ヤンさんのブログの感想でとてもよく理解できました。
オフェリアは、あんなに試練に対して頑張ったんだから、
人間をやめて王国のお姫様に戻ったと思いたいですよね!
私の心はよごれているのよ
①派・・・
現実にこんな人を身近で見てるもんで・・・
YANさん③のトトロ派なのねぇ
夢だけど~夢じゃなかったーって感じかなぁ
ととろっ大好き!!
すんまそん、へんなコメで
オフェリアの心がお母さんと本当のお父さんの元に帰ってならわたしは幸せです
汚れてるから1って事はないでしょう。(^_^;
ほとんどの方は1の解釈じゃないかと思いますよ。
雨里さんの身近に夢の世界に現実逃避してるあみ~ごちゃんがいるって事かな?(≧ε≦)
ただ、オフェリアは決して逃避はしてなかったなと思うのと、
夢じゃなく現実であって欲しいという私の願望が強いのとで、
3なんです。
特にラストは本当に魂が王国に行ったと思いたいのよね~
トトロも好き。あんな感じで夢じゃないですよ、きっと。
これは重くダークでありながら幻想的で素晴らしい作品でした~
私は①が65%、③が35%くらいかな・・・
メルセデスが大尉に刃を向けたとき、
「女だからってなめんじゃないわよ」みたいな事を言ってましたが、
トドメを刺さなかったのは、「やっぱ女は詰めが甘い」と言われても仕方ないんじゃないかと★
あれはノド笛をブッサーと行くべきですよね~
口を裂けたんだから、それだって出来たはずなのに。そこ納得行かない。
これ、良かったですよね~!とっても心に残りました~!
なるほど、私も100%現実だと言い切れない部分もあるから
そう考えると妥当な感じ。(^_^;
そうそう、私もあの時なんで殺さないの、と思った!
(わさぴょんさん「ブッサー」は恐いよ(≧ε≦)・・・)
生かしておいたら後が恐ろしいから、
やっつけるべきだと一瞬思いました。
でも、殺人はやりたくなかったって事なのかなあ?
彼女は兵士ではなかったから。
YANさん、こんばんは!
ようやく記事を書きました。
実は、マックを使っているせいかYANさんが3通り書いてくれた解釈の
番号又は記号が文字化けしちゃってるんです。
なので、想像ですが、YANさんは3番目の解釈ですよね。私は1番目です。
といっても、勿論3番も2番もありだと思いますけど。
3番説を採るYANさんの優しさを感じますね。
オフェリアに感情移入するとやっぱり3番であって欲しいと思いますから。
でも、どういう解釈にしても、YANさんが言うように現実とファンタジーが
うまく融合した素晴らしい作品だと思いました。
こんにちは!
文字化けしてますか。教えてくれて、ありがとうございます。
そうっか~、他の方のPCで見え方が異なる事があるんですね。
数字だけ修正しておきますね。
その通り、私は3番目の解釈にしました。
でも、どの解釈も合うし、どれでもいいと思います。
が、オフェリアには、どうしても感情移入しちゃいますよ!
この作品が描きたかったのは、独裁社会の酷さなんですよね。
そこに上手くファンタジーを融合させた事で、
反独裁のメッセージが濃く出てきましたね~
この映画思っていたよりも良い映画でした。YANさんの感想、凄く上手くまとめているなと、そちらも改めて感心してしまいました。
私も③のイメージで見ていたのですが、ラストでどうも違うなと気がつきました。③のイメージで見ていたら泣く事なんかないのに、本当に「ううう」と泣いてしまいましたよ(泣き虫なので)。
不思議な感覚で現実と夢がリンクしているのも、良かったです。
こんにちは!
DVDジャケット写真を見ると、子供向けファンタジーかなと思いがちだけど、
内容の深い良い映画ですよね~
今、思い返してもいい作品だなあと思います。
kiriyさんに感想を褒めてもらえて、うれしいなあ~♪
でも本当はもっと感動的にまとめたかったわ(^^;
最後は泣けましたね・・・
オフェリアはよく頑張って、現実やパンの試練に耐えたものです。
それをクリアしたんだから、王国に導かれて幸せになってほしいですよね。
この映画、また観たいなあ。
見て、心にこんなにもずっしり来る映画はあまりないと思います。
正直、不思議の国のアリスみたいなものを想像していた僕としては、驚きの連続でした。
特に、最後のシーンは死=つらい生からの解放というメッセージが出ていて、見終わってからも考えさせられます。
こうしたことを考慮に入れると、王国というものは死後の世界を象徴しているのかなあとも思えてきてしまいます。
御訪問ありがとうございます。
これはファンタジーを絡めていながら、ずっしり来ましたね。
何の疑問も抱かずに服従するのはおかしいと言う、
独裁政治への批判が一番のテーマで、深い内容がありました。
最後の王国は天国みたいなものですよね。
つらい生から解放され、苦しみや悲しみのない世界へ行って、
幸せになる事を願うばかりです。
YANさん、こんにちは。お久しぶりです。
結構残酷だって話を聞いて、なかなか手が出なかった作品です。
アクション映画で惨い場面は結構見てるはずなんですけどね~
最後に出てきた王国で、王女はお母さんを演じた女優と二役だったと思います、確か。となると王様は亡くなったお父さんかな。
現実に残された人は悲しいけどオフェリアの魂は満たされたと思いますよ。
根拠は無いんですがこの作品が好きな方は
「クジラの島の少女」も好まれるのではないかと思います。こちらもいい映画でした。
こんにちは!
こちらこそ御無沙汰してました。
同じ作品がなかなかないですね~(^^;
子供が主役のファンタジーだとなめてかかったら、
けっこう残酷なシーンに驚く作品ですよね。
内容も暗くて重くて、しっかりしたものがありました。
そう、確か王女はお母さんなので、王はお父さんじゃないでしょうか。
彼女の魂はあちらの世界で本当にプリンセスとなったと解釈しました。
だから、きっと彼女は幸せになって満たされたんですよね。
「クジラの島の少女」ですね、似たような感じなのかな~?
御紹介ありがとうございます☆
ファシズム下の男性優位社会における、
女性のあり方もけっこう見どころではないでしょうか?
それに迎合して生きていこうとするオフェリアの母。
従うふりをして反旗を狙っているメルセデス。
その抑圧に押しつぶされそうになりながらも、
ひたすら自分らしく生きたいと願っているオフェリア。
オフェリアの姿がメルセデスに与えた影響は、
計り知れないのではないかと思っています。
きっと彼女はこのあとレジスタンスの女闘士として、
フランコ政権の圧政と戦い続けたのではないでしょうか?
自分が求める世界を目指して、それこそ命がけで!
こんにちは!
そうですね、登場した2人の大人の女性は対照的な生き方をしていました。
弱さゆえ男性に頼るしかない母は哀れに見え、
反骨精神を持ったメルセデスは筋が通って見えました。
2人からオフェリアは影響を受け、
自分が正しいと思う生き方を選択したんですよね。
そしてスパイクロッドさんが仰るようにその逆もあるでしょう。
メルセデスもオフェリアから影響を受けた事でしょうね。
レジスタンスに身を投じていったかもしれません。
観客の胸にもオフェリアの姿がしっかり刻まれたんですから。
あの後のメルセデスの行動を考えた事もなかったけど、
ただ圧政に耐えているだけの女性ではないはずです。
そのような観点でこの映画を考えるのも面白いですね!
Comment:
1人の少女に与えられた過酷な試練を描いたダーク・ファンタジー。
まさか、こんなにも重い作品だとは思ってもみませんでした。
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