めぐりあう時間たち
2008-10-08(Wed)

監督:スティーヴン・ダルドリー
製作:2003年アメリカ
出演:*ニコール・キッドマン *ジュリアン・ムーア *メリル・ストリープ
たくさんの愛と驚きと時間たち、そして感動
人生はいつもミステリーに満ちている。
三人の女性が三つの異なる時代で、
それぞれの特別な一日を送ります。
その三つの物語を巧妙に絡ませて見せてくれます。
私は、三人の間を行き交いながら、
どういう繋がりがあるんだろうと、画面に引き付けられました。
うまい流れなんですよ。時代も場所も違うのに。
一人が顔を洗っているシーンが、
自然に他の一人に引き継がれていくと言うような。
この三人のキーとなるのは、「ダロウェイ夫人」という本です。
ヴァージニア(ニコール・キッドマン)は心を病んだ作家で、
「ダロウェイ夫人」を執筆している。
ローラ(ジュリアン・ムーア)は、「ダロウェイ夫人」の愛読者で、
世間の理想とする主婦を演じる事を、苦痛に感じている。
クラリッサ(メリル・ストリープ)は、ダロウェイ夫人と同じ名前なので
「ミセス・ダロウェイ」と呼ばれ、末期ガンの親友の世話をしている。
「ダロウェイ夫人」の本の内容は、作中でローラが語ってます。
「パーティをして周りから幸せだと思われているけど、
実はそうじゃない人の物語」
三人の共通点は同性愛者であるという点もあり(多分)、
特に時代の古いヴァージニアとローラは、自覚があったかどうかは
定かではないでけど、それもあって生き難さを感じていたんだと思います。
まあこれは、あまり重要な要素ではないかもしれませんが。
そして三人は共通に、「死と隣同士の生」を生きていました。
ヴァージニアは「死は他の人間の価値を際立たせる」と言ってましたね。
ローラは、息苦しさを一番、体現していた人でした。
彼女の苦悩は、こちらまで疲れ果ててしまうくらいです。
クラリッサの場合は、末期ガンのリチャード(エド・ハリス)を通して、
息苦しさや死を感じていました。
だからこそ、自分を大切にしていくしかない。
この作品のテーマは「自分で自分の人生を選択する」なのかなと思いました。
つまり「人のため生きるのではなく、自分の人生を全うする」
他人が思う幸せと、本人が感じる幸せは違います。
相手を愛しているからこそ、離れるという選択もあるかもしれません。
それに、相手の優しさが、自分への抑圧と感じる場合もあるでしょう。
自分の望みに正直に行動し、思いを貫く。
その先に「死」があったとしても。
それに伴って、犠牲となる者も出るんですよね~
犠牲を生んでも自分の望む生き方を求めるのが、
人間としての証なのか・・・?
私としては理解できる部分もあり、
気持ちが歩み寄っていかない部分もあり・・・
主人公達に共感できるかどうかで、大きく好き嫌いが分かれる作品でしょうね。
三人の女優達の演技がとにかくすごいです。
ニコールは付け鼻を付けて別人になっているし、
ジュリアンの、表で笑って、裏で泣いている演技は、辛さのオーラが出ているし、
メリルは言葉でなく、ちょっとした表情で雄弁に語っているし、
その演技だけでも圧倒されます。
#2002年アカデミー賞主演女優賞受賞