ノーカントリー
2008-09-15(Mon)
うちの近くのレンタル店では、
新作でも当日返却なら143円だと知ったので、
今回、それで借りてみました。
でも、こういう時に限って、途中で友達から電話があったりで、
ゆっくり観られませんでした。
中断・中断で観ていくうちに、
あっ気ないラストに「はっ??」の気分になり、
慌てて、トミー・リーの夢の話だけ吹き替えで観直し、
返却に走りました。
やっぱり、これからは100円アップでも
せめて1泊でレンタルしようと思います。

監督:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
製作:2007年 アメリカ
原作:コーマック・マッカーシー「血と暴力の国」
出演:*トミー・リー・ジョーンズ *ハビエル・バルデム *ジョシュ・ブローリン
世の中は計算違いで回る
銃撃戦の跡という、明らかに犯罪の臭いのする現場から、
置き去りにされた大金を持ち去った男が、
冷徹な殺し屋に追われる・・・
ネタバレありです
核心には迫ってませんが(迫れませんでした・・(^_^;)
その殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)は、
異様な凄味があって恐ろしい男だ!
噂に違わぬハビエル・バルデムの狂気に、オスカー、納得です。
いきなりオープニングのシーンで見せてくれるじゃないの。
床に残った保安官の無数の靴跡で、シガーという男の恐怖が、
一気に伝わってきて、震え上がりました~
殺しには自分なりのルールがあるようだけど、
ほとんど理屈なし、快楽という感情すらありません。
冷徹で情け容赦ないから、シガーと誰かが向き合うたびに、
常に強いられる緊張感におののきました。
大金を持って逃げるモス(ジョシュ・ブローリン)。
思った以上に機転が利いて度胸も行動力もある。
田舎の溶接工があそこまで出来るとは、感心しました。
それが修羅場を潜り抜けたベトナム帰還兵の底力なんだろうか。
今まで、ベトナム帰還兵に関しての映画は、
精神を病んでしまった話ばかりだったけど、
この作品では敬意を示した描かれ方になっています。
メキシコ国境検問で、帰還兵というだけで入国許可されたり、
ウェルズ(二人目の殺し屋)と病院での会話で、
互いが帰還兵って事でちょっとシンパシーを見せたりしますね。
シガーとモス、モーテルでのニアミスもドキドキですが、
ホテルのドア一枚隔てて対峙するシーンは緊張感が最高潮!
音楽一切なしでピーンと張り詰めた静寂。
ドアの隙間の光を遮る足の影。構えるモス。
去る足の影。消える廊下の灯り。
シガーの全身を見せる事なく、迫り来る恐怖を描いたすごい演出でした。
このあたり、とても丁寧に撮られていたのに、
後半になるにつれて、あっ気ない省略が多くなり肩透かしです。
コーエン兄弟の、観客の予想を裏切るやり方なのかな。
世の中 思うように運ばないぞと、予測不能、理解不能・・・
そういう事を映画の作りでも表しているんでしょうか。
一方、シガーとモスを追うベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)は、
「逃亡者」の時のような切れ者かと思いきや、
最初から「最近の犯罪は全く理解できない、直面したくない」と嘆く。
その通り、アメリカだけじゃなく、日本でも同じく、
社会には秩序がなくなり、理解の及ばない変化が生まれ、
「住みにくい国」となっています。
最初と最後がベル保安官の語りになっているように、
この作品はずっとベル目線のものです。
事件を追いかけても追いつけず、傍観するしかありませんでした。
一度、死を覚悟して現場に戻ったけど取り逃がしてしまいます。
その時のベルのやりきれない表情は何とも言えません。
もう自分には為す術がないとハッキリ限界を感じたんですね。
時代に置いていかれた彼は引退を決意し、
正面から立ち向かう仕事をやめます。
最後に夢の話が出てくるんですが、
父からお金をもらったが失くしたという夢は、
父から保安官としての誇りを譲り受けたけど、
仕事を全うできなかった虚無感でしょうし、
父が先に行って待っていてくれるという夢は、
死後の世界の話でしょう。
この夢の話からすると、シガーが象徴するものは、
「世の中の理解不能な闇」でもあり「人にいつか迫る死」でもあるようです。
でも前者は社会的テーマで、後者は哲学的テーマで別物だし、
実は今でもこのあたり混乱したままスッキリしていません。
(中途半端な感想ですね)
しかし、どちらも不意に襲われたら逃れられないものです。
それはシガー自身にも同様に予測不能な形でやってきます。
もはや誰の力も及ばない・・・一流の皮肉で終わっていました。
#2007年アカデミー賞 作品賞・助演男優賞・監督賞・脚色賞、受賞
新作でも当日返却なら143円だと知ったので、
今回、それで借りてみました。
でも、こういう時に限って、途中で友達から電話があったりで、
ゆっくり観られませんでした。
中断・中断で観ていくうちに、
あっ気ないラストに「はっ??」の気分になり、
慌てて、トミー・リーの夢の話だけ吹き替えで観直し、
返却に走りました。
やっぱり、これからは100円アップでも
せめて1泊でレンタルしようと思います。

監督:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
製作:2007年 アメリカ
原作:コーマック・マッカーシー「血と暴力の国」
出演:*トミー・リー・ジョーンズ *ハビエル・バルデム *ジョシュ・ブローリン
世の中は計算違いで回る
銃撃戦の跡という、明らかに犯罪の臭いのする現場から、
置き去りにされた大金を持ち去った男が、
冷徹な殺し屋に追われる・・・
ネタバレありです
核心には迫ってませんが(迫れませんでした・・(^_^;)
その殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)は、
異様な凄味があって恐ろしい男だ!
噂に違わぬハビエル・バルデムの狂気に、オスカー、納得です。
いきなりオープニングのシーンで見せてくれるじゃないの。
床に残った保安官の無数の靴跡で、シガーという男の恐怖が、
一気に伝わってきて、震え上がりました~
殺しには自分なりのルールがあるようだけど、
ほとんど理屈なし、快楽という感情すらありません。
冷徹で情け容赦ないから、シガーと誰かが向き合うたびに、
常に強いられる緊張感におののきました。
大金を持って逃げるモス(ジョシュ・ブローリン)。
思った以上に機転が利いて度胸も行動力もある。
田舎の溶接工があそこまで出来るとは、感心しました。
それが修羅場を潜り抜けたベトナム帰還兵の底力なんだろうか。
今まで、ベトナム帰還兵に関しての映画は、
精神を病んでしまった話ばかりだったけど、
この作品では敬意を示した描かれ方になっています。
メキシコ国境検問で、帰還兵というだけで入国許可されたり、
ウェルズ(二人目の殺し屋)と病院での会話で、
互いが帰還兵って事でちょっとシンパシーを見せたりしますね。
シガーとモス、モーテルでのニアミスもドキドキですが、
ホテルのドア一枚隔てて対峙するシーンは緊張感が最高潮!
音楽一切なしでピーンと張り詰めた静寂。
ドアの隙間の光を遮る足の影。構えるモス。
去る足の影。消える廊下の灯り。
シガーの全身を見せる事なく、迫り来る恐怖を描いたすごい演出でした。
このあたり、とても丁寧に撮られていたのに、
後半になるにつれて、あっ気ない省略が多くなり肩透かしです。
コーエン兄弟の、観客の予想を裏切るやり方なのかな。
世の中 思うように運ばないぞと、予測不能、理解不能・・・
そういう事を映画の作りでも表しているんでしょうか。
一方、シガーとモスを追うベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)は、
「逃亡者」の時のような切れ者かと思いきや、
最初から「最近の犯罪は全く理解できない、直面したくない」と嘆く。
その通り、アメリカだけじゃなく、日本でも同じく、
社会には秩序がなくなり、理解の及ばない変化が生まれ、
「住みにくい国」となっています。
最初と最後がベル保安官の語りになっているように、
この作品はずっとベル目線のものです。
事件を追いかけても追いつけず、傍観するしかありませんでした。
一度、死を覚悟して現場に戻ったけど取り逃がしてしまいます。
その時のベルのやりきれない表情は何とも言えません。
もう自分には為す術がないとハッキリ限界を感じたんですね。
時代に置いていかれた彼は引退を決意し、
正面から立ち向かう仕事をやめます。
最後に夢の話が出てくるんですが、
父からお金をもらったが失くしたという夢は、
父から保安官としての誇りを譲り受けたけど、
仕事を全うできなかった虚無感でしょうし、
父が先に行って待っていてくれるという夢は、
死後の世界の話でしょう。
この夢の話からすると、シガーが象徴するものは、
「世の中の理解不能な闇」でもあり「人にいつか迫る死」でもあるようです。
でも前者は社会的テーマで、後者は哲学的テーマで別物だし、
実は今でもこのあたり混乱したままスッキリしていません。
(中途半端な感想ですね)
しかし、どちらも不意に襲われたら逃れられないものです。
それはシガー自身にも同様に予測不能な形でやってきます。
もはや誰の力も及ばない・・・一流の皮肉で終わっていました。
#2007年アカデミー賞 作品賞・助演男優賞・監督賞・脚色賞、受賞