主人公は僕だった
2008-05-21(Wed)

監督:マーク・フォースター
製作:2006年 アメリカ
出演:*ウィル・フェレル *マギー・ギレンホール *ダスティン・ホフマン *エマ・トンプソン
男は悩んでいた。自分だけに聴こえる、作家の声に。
国税庁会計検査員のハロルド(ウィル・フェレル)は、
単調な毎日を送っている平凡な男です。
頭の中は、数字と計算でいっぱい。友達は腕時計だけ。
ハロルドにとっては、それが当たり前だし、安定の元でした。
ある日突然、自分の事を同時進行で語っている、
女性の声が聞こえるようになります。
まるで自分を主人公とした小説が書かれているような。
その声は、こう言ったのだ!
「このささいな行為が死を招こうとは、彼は知る由もなかった」
最初のほうは、なかなか楽しい滑り出しでした。
作家のナレーションとともに、画面にグラフィックが出てきて、
画としてもセンスあるなあと思ったし、
ウィル・フェレルも、几帳面過ぎるところがおかしかったりして。
でも全体的に、かなり抑えた演技をしてましたね。
表情を崩さず、ずっと真面目ないい人のままでした。
ハート・ウォーミングな話だったんですね。これは。
作家は、カレン・アイフル。彼女の小説の主人公は皆、死を遂げます。
(カレンは、ハロルドの人生を操っていると分かっていません。)
芸術家肌で変わり者、ボサボサヘアーで中世的なイメージを、
エマ・トンプソンがさすがの存在感で演じてました。
そのアシスタントのクイーン・ラティファも、お笑いじゃなくて
落ち着いた演技で、デンと構えた安定感が良かったです。
ハロルドは、文学の教授ヒルバート(ダスティン・ホフマン)に
相談に行きます。こちらも、名優なので、登場してきた時には、
事態を何とかしてくれると、期待しましたよ。
ちょっとアプローチが変なんだけど、
彼だけは、真面目にハロルドの話を聞いてくれて、
いいアドバイスをしてくれました!
「人生を好きに生きるがいい」と。
ネタバレあります
ハロルドは、非日常的な事が突然起こって、初めて
自分が無感動に時を刻むだけの生活をしてきたと気付きました。
今までにやってこなかった事をやってみようと思い、
女性(マギー・ギレンホール)にアプローチをして恋を成就させ、
昔から弾きたいと思っていたギターを弾いてみるんですね。
人はいつかは死ぬ。それも明日かもしれない。
ならば、人のぬくもりや思いやりなどの、
何気ない日常の彩りを大切にしていこう。
そんな生を大切にするメッセージが込められているんだと思いました。
しかし、それだと、ラストがおかしいんじゃない?
作家の判断は予想通りでした。誰もが思うラストでしょう。
だけど、ヒルバート教授は、「死なないと意味がない」なんて、
人の命より小説の価値のほうに重きを置いている。
まあ、これはブラック・ユーモアとしましょう。
なんと、ハロルド自身 決められた結末を受け入れるとは、
人がいいにもほどがある!
それがハートフルなストーリー展開って事ですか?
私は、テーマとずれてておかしいんじゃないのと、
ここでガッカリしましたよ。
主体性がなさ過ぎるでしょう。
どうしてあのまま自分の人生を、自分の思うように
切り開いていこうとしないんでしょ。
やっと人生に彩りを感じ始めたところだったんだから、
好きな女性のためにも、死を回避して生に向かって
自分の意志で突き進んでいってほしかったですね。
運命は自分の心がけ次第で変えられる、としたほうが、
生に対する思いが描けたと思うんだけどなあ~
納得できないラストで、ちょっと残念でした。