グエムル -漢江の怪物ー
2008-05-13(Tue)

監督:ポン・ジュノ
製作:2006年 韓国
出演:*ソン・ガンホ *ペ・ドゥナ *ビョン・ヒボン *パク・ヘイル
お父さん、助けて!
ネタバレあります
ソウルに流れる大河、漢江のほとりで、
カンドゥ(ソン・ガンホ)は父と共に売店を営んでいました。
(父の足をひっぱるばかりの怠け者)
ソン・ガンホって、作品によってガラッと印象を変えてきますね~
ある日、漢江から得体の知れない怪物が現れ、
カンドゥの娘ヒョンソがさらわれてしまう!
怪物が河川敷で暴れるシーンは、まさにモンスター・パニック映画だけど、
その後は、韓国映画特有の小ネタ笑いが随所に出てきて、
危機感・緊迫感なんてほとんどなし。
映画はモンスター・グエムルよりも、パク一家が物語の中心なのだ。
グータラで居眠りばかりするカンドゥ。
大事なところで力の出せない妹ナムジュに、大卒でフリーターの弟ナミル。
それに、家長の親父さんヒボン(この人については後に)。
それぞれ、どこかちょっと抜けているキャラがいいねえ~
悲しみの場面である合同葬儀での泣き喚きはまだしも、
駐車違反の注意をしに来る、その緊張感の壊し方、ユルユル感に、
ひょっとして死んでいない?と思いましたよ。
案の定、娘の生存が判明して、カンドゥは父と妹・弟のたった4人で、
娘を助けに飛び出します。
何の準備もなく、やみくもに下水溝を歩き回る。
その無謀さに呆れながらも、危険を冒してまでヒョンソのために
行動する愛と勇気には、グッとくるものがありました~!
メイン・テーマは家族愛だったんですね。
カンドゥが「年寄りだ」とバカにしていた親父さんは、
家長らしく一番働いていたと思います。
全財産をはたいて、地図や車を買ったり、
グエムルをみつけたら先頭に立って撃ちに行ったり、
カンドゥに優しくしてやってくれと、妹・弟に話して聞かせたり、
飄々としながらも、いいお父さんで、
だから、親父さんのあのシーンでは、泣けちゃった(T_T)
この家族には母親がいません。
一家のマヌケぶりを、とりあえず出したかったので、
母親という存在をわざと外したのかな?
カンドゥは緩みっぱなしの冴えない男だけど、
はたして本当にマヌケだったんでしょうか?
英語の会話(No Virus)を小耳に挟んで、
「ノー・ウィルス?」って、ちゃんと分かったりします。(≧∇≦)ノ彡☆
国家権力者たちと比べて、どっちがマヌケに見えました?
そもそも在韓米軍が、猛毒のホルムアルデヒドを大量に
漢江に流したのが、事の発端でしょう。
グエムルを作り上げたのは人間の仕業ですよ!
ありもしないウィルスをでっち上げ、証拠を捏造しようとした。
韓国の警察・軍は、ウィルス説を信じて、グエムル退治もせず、
保菌者を隔離する事に躍起になるばかり。
カンドゥたちの話を全く聞こうともしなかった。
だから、カンドゥは、自分たちでヒョンソを助けに行くしかなかったんです。
脳を手術されても、娘を救いたいという気持ちは少しも消えませんでした。
パク一家は、一途な思いで戦いましたよ!そして倒した。
国家がやらなかった事を成し遂げてしまいました。
社会や人間に対する批判というほど強いものじゃないけど、
風刺、ブラック・ユーモアがとても効いてましたね。
あれだけ笑わせておいて、こんな悲しい結末を持ってくるとは。
意外だったけど、代わって男の子と夕食を食べるシーンは良かった。
父と娘を失って初めて、
カンドゥは本当の父親の顔になれたようです。