復讐者に憐れみを
2008-04-24(Thu)

監督:パク・チャヌク
製作:2002年 韓国
出演:*ソン・ガンホ *シン・ハギュン *ペ・ドゥナ
オールド・ボーイの原点
そして、それを超える戦慄の問題作
その衝撃に言葉を失う
パク・チャヌク監督の復讐3部作の第一部って事で観たけど、
先に「オールド・ボーイ」「親切なクムジャさん」を観ていたから、
あまり今作には胸を打つものがなかったですねえ。
3部作の中では、断然「オールド・ボーイ」が衝撃的だし、
内容に重みがあるしひねりも利いていたと思います。
今作は第一部だから、やっぱり初めの一歩って感じ。
この作品では、二人の復讐者が登場します。
一人は、姉思いの素朴な青年リュ(シン・ハギュン)
一人は、娘と二人暮らしの会社社長ドンジン(ソン・ガンホ)
復讐する者が復讐される者になるという構図は
「オールド・ボーイ」と似てますね。
二人はそれぞれ大切な人を失って、激しい憎悪に燃え、
冷淡な復讐者に変身していきます。
元々は、そのあたりにいる普通の一般市民。
犯罪者になる片鱗は微塵もありませんでした。
愛する者を失うという事がいかに大きく人を変えるか!
リュにお金があれば姉を死なせる事はなかったし、
ドンジンがお金持ちでなければ娘を狙われる事もなかった。
リュの彼女を、反資本主義の活動家という設定にしたあたりからも、
現在の社会構造が生んだ格差や、またそこで生まれる不条理を、
批判しているものだと感じました。
意図した事じゃないのに、思いがけない悲劇に陥る、
負の連鎖ってあるなあと思いますよ。
そのあたりは共感もあったけど、復讐を始めてから
一気に酷い殺しに疾走していくのは、
あまりリアルさを感じられませんでしたね~
一般的な人であれば、もっと葛藤があったり、
途中で我に返って後悔したりしそうなものじゃない?
この二人は二人とも、顔色一つ変えずに、
目的達成のために突き進んでいってます。
冷静に見える男達が振るう暴力はとても気味が悪いし、
あまりの残忍さに目を覆いたくなるけど、
ここまで来ると、憐れみを感じないですね。
どっちもどっちで、どちらかに肩入れして見る事もなかった。
だから、片方が優位に立つのはおかしいと思っていたから、
ラストには、やっぱりなと納得しました。
あと、リュが描いた川の絵は完全に映画カメラ視点の構図です。
自分で自分の後姿を客観視した絵にも、リアリティがないなあ。
この絵で、ドンジンが確信するだけに、ちょっとシラけました。
暴力の描写はすんごく過激で、観ていて自分の身体が
痛くなってきました。(特にアキレス腱)
これは、ストーリーより、血塗られたグロいシーンに
力を入れた作品に思えました。