21グラム
2008-04-16(Wed)

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトウ
製作:2003年アメリカ
出演:*ショーン・ペン *ナオミ・ワッツ *ベニチオ・デル・トロ
誰もがいつか失う重さ
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品をもう1本。
「人は死ぬ時、21グラムだけ減る」そうです。
それは心臓(魂)の重さでしょうか?
心臓移植を待つ数学者のポール(ショーン・ペン)と、
麻薬に溺れているところを夫に救われ、
子供達と幸せに暮らすクリスティーナ(ナオミ・ワッツ)と、
信仰にのめり込む前科者のジャック(ベニチオ・デル・トロ)。
この三人が一つの交通事故によって運命が絡まります。
ジャックがクリスティーナの家族を車で轢き逃げし、
彼女の夫の心臓がポールに移植されるという関係です。
三者三様の苦悩と邂逅が描かれてます。
この監督の好みの構成の仕方のようで、
時系列に並んでない。
バラバラにカットしたシーンをパズルのようにちりばめています。
こういう手法は特に目新しいものじゃないし、
役者の表情や状況から、そのパズルを時系列に並び替えるのは、
さほど難しくない事です。(でも「バベル」より複雑)
だけど先にラストを見せられたのは面白くなかったなあ。
「なぜ、そういうラストになるの?」という疑問を持ちつつ
観ていくはめになるじゃないですか。
だから人間模様よりも謎解きパズルのほうに
意識が行ってしまったわあ。
ポールは、心臓を待ちながらも、すでに生きる目的を
失っていましたね。
妻は、「子供さえいれば夫婦生活を取り戻せる」と言い、
人工授精を望んでましたが、
夫婦関係よりも、ただ子供が欲しかっただけ。
修復不能、もうお互いを思う気持ちは存在しないと言う
冷たい雰囲気が漂っていて、見ていて辛かったです。
愛する家族を奪われた悲しみに暮れるクリスティーナが、
なんとか立ち直ろうとしているところへ、
ポールは探し出して行って、事実を打ち明けます。
ポールとしては、もらった21gで得た時間を
クリスティーナのために使おうという気になったんでしょうけど、
その行動が、クリスティーナの心にさざ波をたてるんですね。
一番、息が詰まったのは、ジャック。
自分の罪から自分自身がどうしても逃れられない。
いくら信仰に生きても、罪悪感にさいなまれるばかり。
死にたくても死ねない。生かされるのはなぜ?
もがくジャックを演じるデルトロがガツンと来る感じで良かった!
大切な21gをもらった者、奪った者、喪失した者。
21g・・・あえて軽い数字で表した魂の重さ。生の重さ。
21gがあるがゆえに、苦悩を背負うし、絶望の淵にも落とされます。
それでも人生はつづく。
クリスティーナに新しい命が宿るように、
生きていれば先に希望があるかもしれません。
生きる者と死ぬ者の、その違いである21gは
とてつもなく重いんですよね。
生きる事の重さを描いた作品だと思いました。
胸を締め付けられるように苦しくなって、
ちょっと投げやりにまとめを書いてしまいました。(^_^;
近頃、スミス夫妻以外は、生きるの死ぬのとか
人間の苦悩とかを取り上げた重苦しい作品が続いて、
なんだか疲れてしまったわ。