パフューム ある人殺しの物語
2008-03-22(Sat)

監督:トム・テクヴァ
製作:2006年 ドイツ フランス スペイン
出演:*ベン・ウィショー *ダスティン・ホフマン *レイチェル・ハート=ウッド
その香りに、世界はひれ伏す
前にもこのDVDをレンタルしたけど、時間がなくて、
未見のまま返却したもんだから、
今回借りに行ったら、やっぱり店員さんに言われました。
「以前にもこれ 借りてらっしゃいますよ」と。
『それが何か?』と言いたいところを「観られなかったんですよ~」と
笑って答えたんだけど、これを観終わってから、改めて焦った。
「ゾディアック」2回 「パフューム」2回借りてる私って、
ヤバい人物なのかも(^^;
すっごい映画を観てしまった。( ̄□ ̄;)
背筋が寒くなるような尋常じゃない世界です。
最初から最後までおぞましさに溢れ、強烈なインパクトを放っている。
怖いもの見たさと言うのか、ずっと緊張感を持って、
観続けてしまいましたよ。
私、これ けっこう好き。(^_^;
18世紀、パリの悪臭を放つ魚市場に産み捨てられた
グルヌイユ(ベン・ウィショー)は、人間らしい愛情を何も
知らないまま育っていった。
彼は超人的な嗅覚の持ち主だった。
目を閉じていても、レーダーみたいな鼻の力で、
どの方向に何があるのか神業のように嗅ぎ分ける事ができた。
映画で「匂い」を表現してるんですよ!w(゚o゚)w
鼻のアップ、皮膚のアップ、なめるようにカメラが動いていきます。
雫が滴り落ちる瞬間や、物の色艶を捉えて、
匂いやヌメヌメした感触まで伝わってくるの。
グルヌイユの表情も細かい。
フッと動かす視線の先にあるものをたちまち連想させる。
画面から匂い立ってくるじゃないの!
この作品は、嗅覚だけじゃなく、五感そのものに訴えてくるのだ。
良い香りからひどい悪臭まで全てを受け入れたグルヌイユは、
ある日、街で見かけた赤毛の女の香りに、
目もくらむような思いで引き寄せられます。
そこからはホラーになったりサイコになったり、
もう寒気がする展開で驚いてしまいます。
その女の香りを保存する技術を手に入れたくて、
香水調合師(ダスティン・ホフマン←これまた面白い)に
弟子入りし、貪欲に学びます。
ある時、グルヌイユは、自分に体臭が全くない事に気付き、
ショックを受けます。匂いが、彼の世界で大切な要素だから。
それは、誰にとっても自分は無の存在だという事です。
初めから、この世にいないも同然。
(そう言えば、彼が忍び込んでも誰も気付かない)
そこで、彼は自分の存在を示すために、
「究極の香水」を作ることに没頭していくんです。
取り憑かれたように、恐るべき凶行を繰り返す!
彼の目は異様な光を持ってます。完全に危ない。
不幸な生い立ちを考慮に入れても、異常者でしょう?(^^;
こんな気味の悪い主人公って初めてだと思うなあ。
この演技、ベン・ウィショーってすごい。(°□°;)
猟奇的な凶行の中で、女性の裸体が惜し気も無く
さらされるんだけど、その皮膚と肉が生々しいんです。
処刑場のシーンは、とにかく予想外でした。ヒエ~(゚Д゚)
一体何が起きたのかと、訳が分かりませんでした。
このロケ、大変な事になってたんだろうなあ。
エロスの海だもん。
監督は限りなく変態寄りですよね。でも、
よくこういう映像を撮ったものだと感心しました。
ネタバレあります
この物語の意味は、ナレーションでなんとか掴めました。
「究極の香水」は万人に愛を呼び起こす、
圧倒的な力を持っていました。
恐らくそれは、最初に出会った赤毛の女への
恋心から作られたものだと思います。
ところが自分自身には、何の効力もないと気付きます。
グルヌイユは普通に愛し愛される事ができないんです。
あの涙は、ちょっと可哀想だった・・・
香水にも自分にも何の価値もないと絶望した彼は、
生まれた場所へ戻り、まるで初めからこの世に
いなかったかのように消えていきます。
このラストシーンもおぞましくて、またヒエ~となりました(゚Д゚)
すごく感覚を刺激される作品でしたよ。
音楽も上品でとても良かったし。
今までに無い新鮮味があったなあ。。。