それでもボクはやってない
2008-03-03(Mon)

監督:周防正行
製作:2007年 日本
出演:*加瀬亮 *役所広司 *もたいまさこ *山本耕史
十人の真犯人を逃すとも
一人の無辜を罰するなかれ
先日テレビで放送したのを観ました。
痴漢冤罪問題が突然 身に降りかかり、
「やってない」と主張していく青年(加瀬亮)のケースを
追っていきながら、
日本の司法の問題を浮き彫りにした良作でした。
とにかく、驚きました!
日本の司法が、こういう歪んだ状況だとは。
司法においては、誰もが公正に平等に扱われるものだと、
そしてそこは真実を明らかにしていく場所だと、
私はずっと信じてましたよ。
刑事裁判の有罪率は99.9%
無罪だと主張していく事の困難さを表した数字です。
観ていくと、ありえる事だなあと思えました~
主人公と最初に関わった駅員や、警察・検察にしたら、
毎日何十件とある事件のうちの一つで、
「また痴漢か」くらいの気持ちで接してるんですよね。
そして、最初から『こいつが犯人だ』と決め付けている。
どんなに小さな事件だろうが、容疑をかけられた人間は、
その人生を大きく狂わすというのに。
取調べや裁判において、「心象」というものが重要なんですね。
いたいけな少女が勇気を振り絞って痴漢被害を訴えた。
誰もが、定職に就いていない男よりも、少女を信用するものです。
裁判官が違うと、判決も違ってくる可能性がある。そ、そんな~。。。
最初の裁判官は「疑わしきは罰せず」の姿勢で臨んでいたのに、
小日向さんは、被告人を疑ってかかっていた。
無罪を出す事が出世の妨げになるという裏事情のせいなのか。
起訴した警察や検察の面子を潰す事になるから、
組織の一員である裁判官は、簡単に無罪を出せないんだって。
(そうすると、三○元社長が無罪になったのは0.1%のケースで、
その判決を出した裁判官はその後どうなったのか気になる。。)
それから、法廷で証言する人たちは、
自分の都合の良いように、主張を変えていってしまいます。
どれもこれも腹立たしいけど、決して有り得ない事じゃないでしょう。
全ては人のやる事なんだから。
でも、やっぱりそれは、公平性において問題です。
主人公が抱えた、苛立ちや悔しさや失望を、
自分の事のように同時に味わっていました。
そんな中で登場する弁護士の役所広司。
変な先入観を持たずに毅然とした態度なので、
すごく安心感がありましたね。
そして、主人公の周りには、彼を信じて協力してくれる
母親や友人たちがいて、とても救われました。
同じように痴漢冤罪で闘争している人が、
親身になってしてくれたアドバイスが実用的で、
観る側にしても、参考になりました。
私は4年前にPTA研修で裁判所見学に行ったんです。
なので、法廷シーンがリアルなのがより分かりました。
描き方が実に細やかで丁寧で、監督の熱意に感心しましたよ。
折りしも、来年から裁判員制度が始まるところで、
タイムリーなシュミレーションとなりましたね。
私がもし裁判に臨む事になったら、何事にも先入観を持たず、
真っ白な心で物事を見極めたいものだと思いました。
映画ラストの後味の悪さは、作品に対してよりも、
その後ジワジワと司法制度に向けられるのです。
全ての裁判に問題があると思い込むのは危険ですが。
こういう先入観も良くないんだから。
この映画はとても勉強になり参考になりました。
観て良かったです。
報知映画賞、キネマ旬報ベストテン、毎日映画コンクール、大賞受賞