ブラック・ダリア
2007-11-12(Mon)

監督:ブライアン・デ・パルマ
製作:2006年 アメリカ
原作:ジェイムズ・デルロイ
出演:*ジョシュ・ハートネット *アーロン・エッカート
*スカーレット・ヨハンソン *ヒラリー・スワンク
世界一有名な死体、世界一忌まわしい謎。
身体を腰から切断され、耳まで口を引き裂かれた
女の死体が発見される。
実際の未解決事件を基にした話という事で、
タイトルにもなっているのに、
案外ブラック・ダリア事件の扱いは軽いのだ!
これ程センセーショナルな題材はないでしょうに。
猟奇的ムードがまるでありません。
火と氷のように対照的な刑事、リー(アーロン・エッカート)と
バッキー(ジョシュ・ハートネット)が二人とも事件にのめり込んで、
常軌を逸脱する様子を描きたいんだろうけど、
私にはそんな狂気は伝わって来なかったなあ。。。
心理描写が浅いんだもん。
ブラック・ダリアは、フィルムの中でしか登場しません。
目はパッチリとしているけど輝く魅力はないです。
魅力がないから映画のフィルムテストにも合格せず落ちぶれていくんです。
伝線したストッキングや媚びる仕草に、とても哀しさが表れているんですが。
それでは主人公たちがブラック・ダリアに惹かれる理由は説明不足です。
バッキーが黒髪のマデリン(ヒラリー・スワンク)に引き寄せられるのも、
ブラック・ダリアに似ているからだと言うくらい、重要なポイントなのに。
この殺人事件は、映画の中では解決を見せます。
それも最後の方になってバタバタと説明口調で真相が明かされるので、
あまり盛り上がらないし、死体の酷さの割には凝った事件でもなかった。
父親にとってマデリンは疎ましい存在のはずなのに、
あの可愛がりぶりは何なのだ。気持ち悪い。
ひょっとしてマデリンは相手が男でも女でも父親でも良かったのか?
何よりも一番恐かったのは母親(フィオナ・ショウ)のほうですが。
食事をしている時から狂気を感じさせる様相で、
あの神経の昂ぶりは尋常じゃなかった!素晴らしくキレてました。
結局、全ての悪はお金の力で闇に葬られます。
繁栄の裏に隠された廃部が生んだ事件という事になっています。
この事件と同様に、登場人物の過去にまつわる話も
平行して謎が明かされます。
思いがけない闇が背後にあるけど、サスペンス色はありません。
奇妙な三角関係が浮かび上がっただけです。
バッキーが本当に守らなければならない人が誰か気付いた時には
遅かったんですね。 大きな罪を犯した後でした。
ストーリーには面白味を感じなかったけど、
この作品がつまらなかったわけじゃありません。
全体的にクラシカルなムードが漂っていて映像は良かったです。
1940年代のファッション・・・帽子や赤いルージュ・・は映画に映えますね。
セピア調、影の使い方、黒と白の対比は面白かったし。
最初から、こっちのほうに力を入れた作品なんでしょうか。
ブライアン・デ・パルマ監督作品は2~3観ましたが、
かなり忘れてしまったので、語る程のものを持ち合わせていません。
名立たる俳優陣が、時代を感じさせる銀幕の中で、
色香を放っているのが、この作品の一番の魅力に思えました。