ナイロビの蜂
2007-11-03(Sat)

監督:フェルナンド・メイレレス
製作:2005年 イギリス
出演:*レイフ・ファインズ *レイチェル・ワイズ *ビル・ナイ *ダニー・ヒューストン
地の果てで、やっと君に帰る。
庭いじりが趣味の英国外交官ジャスティン(レイフ・ファインズ)は、
正義感に溢れ情熱的な妻テッサ(レイチェル・ワイズ)が
不審な死に方をし、その真相を追及するため動き出す・・・
テッサとの幸せなひとときを回想しながら、
彼女の軌跡を辿って行く旅は実にドラマチックです。
国家的陰謀に迫るサスペンスでもあり、
二人の愛を浮かび上がらせるラブストーリーでもありますが、
何より、先進国が利益のためアフリカを利用している
現実を示した社会派ドラマであるという印象が強いです。
ケニアのスラブが舞台となると、まるでドキュメンタリーのような
映像に見え、それがこの作品に力と重さを与えていると思います。
HIV、結核などの病と、
貧困が蔓延する生々しい実情が迫ってくるんです。
そこでは命があまりにも軽んじられているのが衝撃的です。
製薬会社と政府は、人の死で利益を得ている。
弱者であるケニアの人々を何とか救いたいという純粋な思いの
テッサの行動を、ジャスティンは彼女の死後に次第に知っていきます。
だけど、そもそも、政府を相手に巨大な陰謀を暴くという
大変な事をしているのに、それを夫に秘密にするところが、
私は納得できません。夫以外の人には話しているのに。
夫を守りたいがために話せなかったと言っているけど、
相手にしているものが政府・巨大企業で、
危険が夫にも及ぶのは当然の事だから秘密にしようがない。
このせいで、ジャスティンは苦しむはめとなったんです。
それを愛と呼ぶのは、いまいち理解に苦しみます。
でも、テッサの愛の深さは本物として描かれ、随所で確認できます。
PCファイルの映像は、ジャスティンに対する愛しさに溢れていて、
それを見つめるジャスティンの表情には、こちらも泣けました~
レイチェル・ワイズが美しいと思ったのは、この作品が初めてです。
レイフもジャスティンの心情の変化を上手く表しています。
自分の庭から外の世界へ動き出すのは、
ひたすらテッサを理解したいという思いなんでしょう。
事件の追及の仕方は、英国人らしく品が良いです。
サンディの手紙をみつけた時ですら、爆発する事がありません。
このような紳士の風情にレイフはピッタリなんです!
正直に言うと、どこまで事件を追ったら気が済むんだろうと、
ちょっと途中でダレました。
だけど、ラストを見て納得しました。
ジャスティンは、事件の決着を付けた上で、
テッサのところに行きたかったんですね。
映画コピーの「地の果てで、やっと君に帰る」は、
ラストになってジ~ンと心に沁みました!
40Km歩く親子を乗せようと「車を止めて」と
テッサが言うシーンとだぶるように、
襲撃部隊から逃げる子供を飛行機に乗せてくれと頼むジャスティン。
自ら降りる子供の姿は悲しいね。。。
目の前の一人の人間すら救う事ができない圧倒的無力感。
不幸な境遇にいる人間の数が多過ぎるのだ。
ジャスティンの命をかけた旅に追従しながら、
アフリカの惨状、それを利用する権力者、
夫婦の深い愛が織り成すドラマに、心が震えました。
2005年アカデミー助演女優賞受賞