クラッシュ
2007-10-19(Fri)

監督:ポール・ハギス
製作:2004年 アメリカ
出演:*ドン・チードル *マット・ディロン *サンドラ・ブロック
人はぶつかりあう。
人は人を傷つける。
怒り、哀しみ、憎しみ、孤独。
それでも、人は、人を愛していく。
最初の車同士の衝突に始まって、
いろんな人同士の衝突があります。
黒人だのメキシコ人だのアジア人だの、
侮辱したセリフの言い回しによって、
人種差別問題が根底にあるんだと、初めは思いました。
実際、アメリカの現実を見せ付けられた気がしました。
ものすごい数の人種がいる事。
白人が、無意識に差別や偏見というものを抱えている事。
私が想像した以上に、根深いものがあるんだなあと、
再認識させられましたよ。
ストーリーが進むにつれて、たくさんの登場人物がみんな、
イライラしているものだから、ささくれだってトゲトゲしい
感覚ばかりが伝わってきます。
これは、人種差別問題を超えて、
人間の心のありようが問題じゃないかと思えてきました。
人間の心の中にある負の部分が、
衝突の連鎖を引き起こしているのだと・・・
怒り、いらだち、不満、憎しみ、差別が、
外に向かって発せられるのは、
根深い人種差別問題も一つの要因ではあるけど、
全ての原因ではない。
負の部分は誰もが持っているのです。
その感情にまかせて行動すると、
すれ違いやトラブルなどの負の方向にしか進みません。
前半は、その具体例を、これでもかと言うくらいに見せられます。
だけど、後半では、心の正の部分を効果的に出してくるんです~!
これが上手いんですよね。
人は、負の部分を補って余りあるくらい、
正の部分も併せ持っています。
優しさ、思いやり、愛情、正義感も、存分に描かれています。
ささくれだってガサガサしたところに注がれる潤いは、
実に倍以上の力を持って、ジワ~と沁みてくるじゃないですか!
またちょうど、心をゆさぶる音楽が良い具合に流れて、
目頭が熱くなるんですよ~
表裏一体で不完全な人間が、とても愛おしく感じられました。
と共に、人間関係・社会の潤滑油は、
心の正の部分にあると改めて気付きましたね・・・
多くの登場人物が均等の比重で描かれていて、
こちらのエピソード、あちらのエピソードと飛び回るのに、
グチャグチャにはならず、理解しやすいように展開していきます。
「ラブ・アクチュアリー・ビター編」かな、とも思ったけど、
それよりもエピソードの絡め方がずっとうまく出来てます。
構成が見事な群像劇ですね。
私は透明マントのエピソードのエピソードで一番泣けました~(T_T)
2005年度アカデミー賞 作品賞・脚本賞・編集賞 受賞