父、帰る
2007-10-13(Sat)

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
製作:2003年 ロシア
出演:*コンスタンチン・ラブロネンコ *イワン・ドブロヌラヴォフ
*ウラジーミル・ガーリン
なんで今さら帰ってきたんだ
二人の兄弟は、母子家庭でつつましく暮らしていましたが、
そこへ12年ぶりに、突然父親が帰ってきます。
戸惑うばかりの子供たち。
次の日、父は兄弟を小旅行に連れ出します。
不思議な味わいの映画なんですよ。
親子ものによくある、ほんわか暖かい雰囲気とか
熱い思いとかはまるでありません。
子供目線で描いている作品で、
私も子供に共感してずっと苛立ちが続き、
納得いかない気持ちで観てしまいます。
それと言うのも、突然帰ってきた父は、
感情的で命令口調。その上横柄な態度。
子供にしてみれば、とても理想的な父とは言えないでしょう。
母にしても、事情を説明してくれないんです。
どうして突然帰ってきたのか?
それまでどこで何をしていたのか?
父子三人の小旅行の目的は何なのか?
土に埋めていた箱の中身は何なのか?
「誤解している」の意味は?
観ていたこちらにすら、一切説明なし!!
謎は謎のまま、湖の底にユラユラと沈んで消えていってしまいました・・・
でもね、子供たちの描き方、演技が素晴らしい!
兄アンドレイ(ウラジーミル・ガーリン)は威圧的な父にも
男として認めてもらいたくて、父の後を従順についていきます。
弟イワン(イワン・ドブロヌラヴォフ)は子供らしいストレートな
感情をむき出しにして、反抗的な態度を取ります。
高くそびえる飛び込み台は、父親の象徴なのか
ジャンプのできる兄と、尻込みする弟とでは、
父親を受け入れる気持ちが異なり、
兄のほうが、より父親を身近に感じています。
ショッキングな出来事の後、ムードは一転し、
兄はまるで父のように冷静に命令を出し、弟はうろたえる。
その時二人は、父がどんな人間であろうといてほしかったと
思ったでしょうね。
でも、息子というものは、いつか父を乗り越えていくものなんだ・・・
初めて接した父性により、一周り成長した姿を描いています。
風景の美しさと、雨のシーンと、モノクロ写真が印象的です。
地味だけど、心にひっかかる作品ですね~
兄役のウラジーミル・ガーリンは、撮影後に湖で溺死したそうで、
それを知って、より一層悲しみと感慨が深くなりました。
2003年ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞・新人監督賞 受賞