ある子供
2007-10-11(Thu)

監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック・ダルデンヌ
製作:2005年 ベルギー・フランス
出演:*ジェレミー・レニエ *デボラ・フラソワ *オリヴィエ・グルメ
痛みを知ること、やさしくなること。
この映画、音楽が全くない事や、
セリフが少なくて、一つの状態を長く撮っているところなど、
「息子のまなざし」に似ているなあと思っていたら、
やっぱり監督が同じダルデンヌ兄弟でした。
「息子のまなざし」はすごく印象的でよく覚えているから、
2度目となる今作では、個性的手法に驚く事はなかったです。
この作品は、主人公の20才の男ブリュノ(ジェレミー・レニエ)の
未熟さ加減を、ひたすら追っていきます。
18才のソニア(デボラ・フランソワ)との間に赤ちゃんが生まれても
父親の自覚なんてまるでなく、
その日暮らしの荒んだ生活をしています。
ソニアも若いしひどく幼稚で、二人がじゃれ合う姿は小学生並み。
子供が子供を産んじゃったわけですね。あ~あ。。。
次から次へと無思慮な行動をとり、とことんダメぶりを見せてくれる。
食べていくためにやる事は、
盗品を売ったり、ひったくりをする事。
赤ちゃんですら、盗品と同じような扱いをするんですよ。
最初のうちは、『何やってるの』って腹が立ちましたよ!
そのうち、あまりに愚かで、だんだん悲しくなってきた。。。
こんなんでどうするの、コイツは・・・と哀れを感じたわ。
産んだ女性は、子供を自分の分身のように思えるから、
まだ大切にしようとする気持ちが芽生えやすいでしょう。
だけど、男性にとっては父性というのは、
子供と触れ合っていかないとなかなか感じる事はできません。
おむつを換えるとか、ミルクを飲ませるとか、
あやして笑わせるとか、そんな中から徐々に生まれるのでは?
そういう事をしないブリュノにとって、
赤ちゃんは命ある者という感覚がありません。
でも、根っからのワルじゃないって事は見ていて分かるんですよ。
少年が寒いと言えば、足をさすってやったりする男なの。
どうしてあそこまで浅はかなのか?
それは、本当に無知だから。
周りに、彼らを導いてやる大人、お手本になる大人が、
一人もいないんですよ!
学んで成長する機会や場所から転げ落ちたまま、
置き去りにされちゃってる。
この作品は、こういう大人になれない子供、
恐いほど無思慮なまま生きている子供が、
増えてきている現実を切り取って見せてくれています。
気になるのは、やっぱりラスト。またバシッと幕を下ろされたなあ。
何か言いなさいよ!
ブリュノは一度も「すまない」って謝ってないのだ。
もし、この一言が聞けたら、
彼らは失敗を反省し、多少成長したと希望が持てるでしょう。
でも、私には『刑務所イヤだよう』くらいしか
言いそうにないように思えます。
大人になるのに、1cm程しか前進していない気がします。
私がえらそうな事を言える立場ではないけど、
自分の事だけじゃなく人の事も大切に思えるように、
計画的に生活する事ができるように、
そんな風になるには、もっと経験を積む必要があるんだろうなあ。
そして社会も彼らに無関心ではいけないんです。
カンヌ国際映画祭パルムドール大賞受賞
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