息子のまなざし
2007-10-11(Thu)

監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック・ダルデンヌ
製作:2002年 ベルギー
出演:*オリヴィエ・グルメ *モルガン・マリンヌ *イザベラ・スパール
人は受け入れることから、愛が生まれる。
ネタバレあります
惹かれるタイトルですよね~
家族愛をテーマにした映画かと思いきや、見事に裏切られました。
そんなほのぼのとした感情は一切ない作品でした。
職業訓練校で先生をしている男オリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)のところに、
少年フランシス(モルガン・マリンヌ)が入校してきます。
その時から、オリヴィエは心中穏やかでなくなり、
獲物を探るような目で少年の姿を追いかけます。それはなぜか・・・
その少年は、オリヴィエを不幸のどん底に落とした張本人でした。
憎んでも憎みきれない相手でした。
でも、少年のほうは気付いていません。
それを知ってから、私も胸が痛くて苦しくて、
それでも、とにかくこの二人の行方を見守るしかないと思って観続けました。
オリヴィエと少年の間には、微妙な距離感と緊迫感が流れています。
オリヴィエの無表情を装う顔のアップ・・・ひたすら沈黙・・・
この映画は音楽が全くありません。セリフもかなり少ないです。
間の多い独特な映画です。
でも、沈黙の中に、『言いたい事は山ほどある』という心の声が、
ビンビンとこちらに伝わってくる~! う~苦しい! (>_<。)
調べてみると、少年も、孤独で不幸な身の上でした。
この子役のモルガン君、陰をうまく表現できる哀愁ある少年だなあ。
いつしか、オリヴィエは、少年の中に、
自分の息子の面影を追うようになります。
タイトルの「息子のまなざし」と言うのは、
少年に息子のまなざしを見たという意味でしょうか。
どちらかと言うと、おじさんオリヴィエ目線の映画なので、
「父のまなざし」に近い気がしたんですが。
二人の関係は少しずつ近づいているように思えます。
どうなるのかと言うところで・・・
驚くのは、ラストのシャットダウン。
バシッという幕の下ろし方。
「ええっ~~? ここで終わり?」思わず叫びました。
そんな私を突き放すように、音楽のないエンドロール。
シーン・・・静寂・・
じゃあ、少年の気持ちはどうなの?罪の意識とかさあ!
観る側としては、いろいろ考えを巡らす事はできるけど、
私は、彼自身の言葉で何か言ってほしかった~~
一風変わったこの作風は、忘れがたいです。
ラストに不満はありつつも、印象度で、★★★★★だと思います。