ブロークバック・マウンテン
2007-10-03(Wed)
わさぴょんさんと、この作品について話していたら、
やたら懐かしくなったので、この感想をブログに持ってきました。
すっごく長いので、読む方は覚悟して下さい。

監督:アン・リー
製作:2005年 アメリカ
出演:*ヒース・レジャー *ジェイク・ギレンホール *ミシェル・ウィリアムズ
*アン・ハサウェイ
はじまりは、純粋な友情の芽生えからだった
これって、ハマる映画だわあ~!
初め観た時は、私個人としてはすごく好きだけど、
作品的内容からすると、世界各国の映画賞を総ナメって
いうのは、どうなんだろうと、冷静に構える自分がいました。
でも、映画を反すうしながら主人公たちの事を考えていると、
どうしてもまたあの二人に会いたくなる。
次の日になっても二人に会いたくてたまらなくなる。
それで、何度も繰り返し観てしまいました。
このブロークバックは、私の心を捉えて離さない!
同じように、世界中の人々の心を捉えての賞だったのでしょう。
寡黙で素朴なイニス(ヒース・レジャー)と
少年の心そのままのようなジャック(ジェイク・ギレンホール)、
正反対の性格の二人が、ひと夏、羊放牧の管理の仕事をします。
ここの大自然の風景は圧巻です。
壮大な山々に、表情をいろいろ変える雲。
山腹に群がる見た事もない数の羊たち。
その果てしなく雄大な自然の中で、たった二人が、
黙々と働いているのです。
BGMで、アコースティック・ギターの哀愁を帯びた
メロディーが流れる♪・・・これがすごくいい!!
このシチュエーションは、二人が結び付くのに、
大きな影響を与えたと思うわ~
それでも、最初観た時は、ものすごく淡々とした運びに、
それぞれの登場人物の心情が、
詳しく描かれていないじゃないか、と思いましたよ。
でも、2回目観ていくと、細やかな演出が
成されている事に気付きます。
ワンシーンの解釈にしても、観る者がいろいろと
思い巡らせるように、余白が取ってある映画なんですね。
多くの説明がない分、こちらの思い入れ次第で、
その余白にたくさん詰め込んでいけるのです。
アン・リー監督ってすごいセンスを持ってますね~
==ここからは、あらすじのようになってしまったので
未見の方はご注意ください==
1回目観た時は、二人が友情の一線を越えるのは、
ものすごく唐突に感じられたんだけど、
2回目観てみると、ジャックは最初からイニスの事を
ジットリと熱のこもった目で見てるよ。見てる!
イニスが裸になって身体を拭いている時でも、
ジャックは何でもないように背中を向けているけど、
実は息を殺すように自分を抑えているんだよね~
こういう事は、2回目以降に見えてきたから不思議です。
二人が主役なのに、映画賞では、
主演男優賞がヒース・レジャー、
助演男優賞がジェイク・ギレンホールとなっているのは、
なぜだろうと考えていたんですが、
これはやっぱり、イニスの物語なんだと思いましたね。
1960~70年代、同性愛に対する偏見が根強く、
人に知られたらリンチで殺されるような時代でした。
実際にイニスは、子供時代に、
リンチで殺された死体を見せ付けられました。
手を下したのはイニスの父親で、
『愚かなマネをすると、こんなひどい目に遭うんだぞ』と
強烈に戒めを受けていました。
イニスはジャックに出会うまでは普通に女性を好きで、
アルマ(ミシェル・ウィリアムズ)と婚約もしていた。
でも、ジャックに出会い愛してしまった。。。
それが、たまたま同性だったため、
深い苦しみを味わう事になるのです。
ジャックのほうは、自分がゲイである事を受け入れていて、
一途に自分の想いを相手にぶつける事ができるし、
どうしてもやりきれない時は男娼まで買ってしまう。
割と自分の気持ちに素直に行動できるタイプです。
それに比べると、イニスのほうは、罪の意識が強く、
苦悩が大きかったでしょう。
ひと夏の羊番の仕事が終わった時、
あっさりと別れる二人だけど、
直後イニスはまるで嘔吐するかのように嗚咽して崩れます。
別れた寂しさだけじゃなく、
とんでもない事をしてしまったと言う後悔と、
それを断ち切れそうにない自分へのおののきが、
あまりにも大きくて、立っていられない程だったんでしょう。
その後は、二人とも普通に結婚し子供も設けます。
そのまま普通の暮らしをしていれば、
ブロークバックでの事はただの思い出になったのに、
それでは気持ちが収まらなかったんだね。。。
4年後、再会を果たします。このシーン好きなのよね~
二人は一度、友情のハグをするんだけど、
目を見てお互いの気持ちを瞬時に察し、
熱い抱擁に変わるの♪
そこを偶然、イニスの妻アルマは目撃してしまいます。
ミシェル・ウィリアムズのショックを受けた演技がすっごく良い!
言葉には出さないけど、不信感と嫉妬と怒りの葛藤。
二人にとって、ブロークバックでの密会は、
初めのうちは楽しかったでしょう。
ブロークバックの山だけは、彼らを責める事なく、
受け入れてくれたんだから。
でも、山を下りれば、二人には現実の生活があります。
二人で会えるのは、年に2~3回のみ。
想いは募り、一緒にいられない苛立ちに悩まされます。
妻と不仲になり離婚後のイニスは、
家族を失い、経済的にも苦しく、誰とも恋愛できず、
ジャックと暮す事など世間的に毛頭できません。
この時のイニスは実に孤独でした。
男性を愛している自分を受けいれる事ができず、
それを隠して生活していくしかなかった。
異端では生きていけない苦しさがそこにはあります。
二人はどうしようもないんです。
当時は許されない愛なのだから。
それでもどうしても相手に惹かれてしまう。
その苦しさを20年も抱えていたんだよ、二人は!
どうにもやりきれないね。。。
この行き場のない哀しみに、私だって張り裂けそうになったわ。
「いっそ別れられたら」「おまえのせいで自分を見失った」と
一気に感情が溢れ出して、泣き崩れる二人。
このシーンは何度観ても泣けるわ~~(T_T) ここツボ
でも、別れはジャックの悲惨な出来事によって突然やって来ます。
二人の愛の深さゆえに、周囲の人たちを、
知らないうちに傷付けていたようですね。
イニスの妻もそうだし、ジャックの妻、ジャックの両親も、
みんな彼らの秘密に気付いていた。
細やかな表情にそれは出ています。
特にジャックの母親は複雑な心境を目で物語っていましたね。
最後に出てくるシャツには、また泣かされましたよ~(T_T)
イニスは、ジャックの部屋で2枚重ねてハンガーにかけてある
シャツをみつけます。
袖口に血のついたブロークバックで殴りあった時のシャツだ!
イニスのチェック模様のを下に、ジャックのブルーのシャツを
その上から包み込むように重ねてあるんです。
それを形見の品として受け取ったイニスのクローゼットを見ると、
逆にジャックのシャツが下になって、イニスのシャツが上から
包み込むようにかけてある~~
もう、この演出、ニクいね~~
ジャックがいなくなった後、イニスは心なしかスッキリして見えます。
自分を呪縛してきたものから解放された気持ちもあるんでしょう。
これで、ジャックとの愛を永遠のものに昇華させる事ができたんです。
19歳で居場所をなくしたと言っていたイニスは、
その後ジャックと出会い強い愛を知りますが、
ブロークバック以外に居場所はなく、恋愛に翻弄され、
20年近くをまともに生きられませんでした。
最後にやっと迷わずジャックを愛する境地に至り、
自分の居場所に落ち着くことができたんですね。
これは、イニスの物語に違いありません。
私は、この映画では常に二人の立場でのめり込んできました。
それぞれの妻もかわいそうだとは思ったけど、
妻の立場になって感情移入するという事はありませんでしたね。
でも、観れば観るほど、いろんな人の心の機微が伝わってきて、
せつなさで一杯になります。
こんなに、登場人物との世界を共有したのは珍しいですよ。
いつまで後を引くんだろう。。。
エンドクレジットで流れるウィリー・ネルソンの
「He was a friend of mine」と言う曲にも、再び涙ですよ~
2005年アカデミー賞監督賞・脚本賞・作曲賞 受賞
やたら懐かしくなったので、この感想をブログに持ってきました。
すっごく長いので、読む方は覚悟して下さい。

監督:アン・リー
製作:2005年 アメリカ
出演:*ヒース・レジャー *ジェイク・ギレンホール *ミシェル・ウィリアムズ
*アン・ハサウェイ
はじまりは、純粋な友情の芽生えからだった
これって、ハマる映画だわあ~!
初め観た時は、私個人としてはすごく好きだけど、
作品的内容からすると、世界各国の映画賞を総ナメって
いうのは、どうなんだろうと、冷静に構える自分がいました。
でも、映画を反すうしながら主人公たちの事を考えていると、
どうしてもまたあの二人に会いたくなる。
次の日になっても二人に会いたくてたまらなくなる。
それで、何度も繰り返し観てしまいました。
このブロークバックは、私の心を捉えて離さない!
同じように、世界中の人々の心を捉えての賞だったのでしょう。
寡黙で素朴なイニス(ヒース・レジャー)と
少年の心そのままのようなジャック(ジェイク・ギレンホール)、
正反対の性格の二人が、ひと夏、羊放牧の管理の仕事をします。
ここの大自然の風景は圧巻です。
壮大な山々に、表情をいろいろ変える雲。
山腹に群がる見た事もない数の羊たち。
その果てしなく雄大な自然の中で、たった二人が、
黙々と働いているのです。
BGMで、アコースティック・ギターの哀愁を帯びた
メロディーが流れる♪・・・これがすごくいい!!
このシチュエーションは、二人が結び付くのに、
大きな影響を与えたと思うわ~
それでも、最初観た時は、ものすごく淡々とした運びに、
それぞれの登場人物の心情が、
詳しく描かれていないじゃないか、と思いましたよ。
でも、2回目観ていくと、細やかな演出が
成されている事に気付きます。
ワンシーンの解釈にしても、観る者がいろいろと
思い巡らせるように、余白が取ってある映画なんですね。
多くの説明がない分、こちらの思い入れ次第で、
その余白にたくさん詰め込んでいけるのです。
アン・リー監督ってすごいセンスを持ってますね~
==ここからは、あらすじのようになってしまったので
未見の方はご注意ください==
1回目観た時は、二人が友情の一線を越えるのは、
ものすごく唐突に感じられたんだけど、
2回目観てみると、ジャックは最初からイニスの事を
ジットリと熱のこもった目で見てるよ。見てる!
イニスが裸になって身体を拭いている時でも、
ジャックは何でもないように背中を向けているけど、
実は息を殺すように自分を抑えているんだよね~
こういう事は、2回目以降に見えてきたから不思議です。
二人が主役なのに、映画賞では、
主演男優賞がヒース・レジャー、
助演男優賞がジェイク・ギレンホールとなっているのは、
なぜだろうと考えていたんですが、
これはやっぱり、イニスの物語なんだと思いましたね。
1960~70年代、同性愛に対する偏見が根強く、
人に知られたらリンチで殺されるような時代でした。
実際にイニスは、子供時代に、
リンチで殺された死体を見せ付けられました。
手を下したのはイニスの父親で、
『愚かなマネをすると、こんなひどい目に遭うんだぞ』と
強烈に戒めを受けていました。
イニスはジャックに出会うまでは普通に女性を好きで、
アルマ(ミシェル・ウィリアムズ)と婚約もしていた。
でも、ジャックに出会い愛してしまった。。。
それが、たまたま同性だったため、
深い苦しみを味わう事になるのです。
ジャックのほうは、自分がゲイである事を受け入れていて、
一途に自分の想いを相手にぶつける事ができるし、
どうしてもやりきれない時は男娼まで買ってしまう。
割と自分の気持ちに素直に行動できるタイプです。
それに比べると、イニスのほうは、罪の意識が強く、
苦悩が大きかったでしょう。
ひと夏の羊番の仕事が終わった時、
あっさりと別れる二人だけど、
直後イニスはまるで嘔吐するかのように嗚咽して崩れます。
別れた寂しさだけじゃなく、
とんでもない事をしてしまったと言う後悔と、
それを断ち切れそうにない自分へのおののきが、
あまりにも大きくて、立っていられない程だったんでしょう。
その後は、二人とも普通に結婚し子供も設けます。
そのまま普通の暮らしをしていれば、
ブロークバックでの事はただの思い出になったのに、
それでは気持ちが収まらなかったんだね。。。
4年後、再会を果たします。このシーン好きなのよね~
二人は一度、友情のハグをするんだけど、
目を見てお互いの気持ちを瞬時に察し、
熱い抱擁に変わるの♪
そこを偶然、イニスの妻アルマは目撃してしまいます。
ミシェル・ウィリアムズのショックを受けた演技がすっごく良い!
言葉には出さないけど、不信感と嫉妬と怒りの葛藤。
二人にとって、ブロークバックでの密会は、
初めのうちは楽しかったでしょう。
ブロークバックの山だけは、彼らを責める事なく、
受け入れてくれたんだから。
でも、山を下りれば、二人には現実の生活があります。
二人で会えるのは、年に2~3回のみ。
想いは募り、一緒にいられない苛立ちに悩まされます。
妻と不仲になり離婚後のイニスは、
家族を失い、経済的にも苦しく、誰とも恋愛できず、
ジャックと暮す事など世間的に毛頭できません。
この時のイニスは実に孤独でした。
男性を愛している自分を受けいれる事ができず、
それを隠して生活していくしかなかった。
異端では生きていけない苦しさがそこにはあります。
二人はどうしようもないんです。
当時は許されない愛なのだから。
それでもどうしても相手に惹かれてしまう。
その苦しさを20年も抱えていたんだよ、二人は!
どうにもやりきれないね。。。
この行き場のない哀しみに、私だって張り裂けそうになったわ。
「いっそ別れられたら」「おまえのせいで自分を見失った」と
一気に感情が溢れ出して、泣き崩れる二人。
このシーンは何度観ても泣けるわ~~(T_T) ここツボ
でも、別れはジャックの悲惨な出来事によって突然やって来ます。
二人の愛の深さゆえに、周囲の人たちを、
知らないうちに傷付けていたようですね。
イニスの妻もそうだし、ジャックの妻、ジャックの両親も、
みんな彼らの秘密に気付いていた。
細やかな表情にそれは出ています。
特にジャックの母親は複雑な心境を目で物語っていましたね。
最後に出てくるシャツには、また泣かされましたよ~(T_T)
イニスは、ジャックの部屋で2枚重ねてハンガーにかけてある
シャツをみつけます。
袖口に血のついたブロークバックで殴りあった時のシャツだ!
イニスのチェック模様のを下に、ジャックのブルーのシャツを
その上から包み込むように重ねてあるんです。
それを形見の品として受け取ったイニスのクローゼットを見ると、
逆にジャックのシャツが下になって、イニスのシャツが上から
包み込むようにかけてある~~
もう、この演出、ニクいね~~
ジャックがいなくなった後、イニスは心なしかスッキリして見えます。
自分を呪縛してきたものから解放された気持ちもあるんでしょう。
これで、ジャックとの愛を永遠のものに昇華させる事ができたんです。
19歳で居場所をなくしたと言っていたイニスは、
その後ジャックと出会い強い愛を知りますが、
ブロークバック以外に居場所はなく、恋愛に翻弄され、
20年近くをまともに生きられませんでした。
最後にやっと迷わずジャックを愛する境地に至り、
自分の居場所に落ち着くことができたんですね。
これは、イニスの物語に違いありません。
私は、この映画では常に二人の立場でのめり込んできました。
それぞれの妻もかわいそうだとは思ったけど、
妻の立場になって感情移入するという事はありませんでしたね。
でも、観れば観るほど、いろんな人の心の機微が伝わってきて、
せつなさで一杯になります。
こんなに、登場人物との世界を共有したのは珍しいですよ。
いつまで後を引くんだろう。。。
エンドクレジットで流れるウィリー・ネルソンの
「He was a friend of mine」と言う曲にも、再び涙ですよ~
2005年アカデミー賞監督賞・脚本賞・作曲賞 受賞