トゥモロー・ワールド
2007-08-30(Thu)

監督:アルフォンソ・キュアロン
製作:2006年 アメリカ・イギリス
出演:*クライヴ・オーウェン *ジュリアン・ムーア *マイケル・ケイン
唯一の希望を失えば、人類に明日はない
2027年、人類は生殖能力を失ったため、
18年間も子供が誕生しておらず、
未来への希望を失っていた。
世界は崩壊し、イギリスだけが外国人不法入国者を
排除しながら、存続していた。。。
無法地帯と化した世界の描写が、
どんよりした深緑色の空気に染められていて、
荒廃感がとてもよく出ています。色合いが良いんですよね。
でも、一部の特権階級の者(文科大臣)だけは、
ゲルニカなどの芸術品に囲まれて、
荒廃とは無縁の、豊かな暮らしをしてるんです。
ここでは格差社会を見せ付けられます。
主人公セオ(クライヴ・オーウェン)は、突然、
反政府組織FISHに拉致されてから、あれよあれよと言う間に
危険な状況に巻き込まれます。
バイクやパトカーに追われるシーンから、
とんでもなく心拍数が上がってくる~!
それも、事態が二転三転し、先が読めません。
この映画は、主人公目線で進んでいくのだ!
訳の分からない状況に投げ込まれた恐怖感や緊迫感を、
主人公と共有して味わう事になります。
人類にとって18年ぶりの新しい命を守っていく責任を
負わされる事になるんですが、その重責に戸惑う事なく、
当然の使命のように、前に突き進んでいくセオは、
実に頼もしい男ですよ。
人類の希望の光を、なんとか繋いでいきたいという
強い願いが、無口な男から伝わってきました!
クライマックスの戦闘シーンは、圧倒的な臨場感で迫ってきます。
主人公目線に近いので、自分もその場に放り込まれた気に
させられます。まるでドキュメンタリーのようです。
そして、感動のシーン・・・
一つの命に、みんなが攻撃の手を止めます。
神々しい未来の命。希望の象徴。
胸を打つシーンですよね~
それでも、爆撃によって、みんなハッと我に帰り、
また戦闘を開始する。本当に未来はあるのか?
先の見えないところに進む不安ばかりで、
最後まで、これが一番良い選択なのか、
私には分かりませんでした。
「明日の世界」・・・これは明日にでも起こりうる世界なんです。
決して作り話として楽観視できないものです。
「人類の子供たち」が誕生しなくなった原因は、
環境破壊や新種のウィルスかもしれません。
あるいは、「子供はいらない」と言う若者の意識や、
子育てをし難い世の中の状況や、
虐待という問題でもあるかもしれません。
今現在の人間たちが辿り着くであろう、近い未来なんだと思います。
こんな悲惨な未来にしないようにというメッセージを受け取りました。
ただのSFアクションでない、恐さを感じましたね~
この作品は、随所にブリティッシュ・ロックが流れます。
D.パープルのデビュー曲「ハッシュ」には驚いたし、
「クリムゾン・キングの宮殿」「ルビー・チューズデイ」は
印象的な使われ方をしてますね。
一番感激したのは、文科大臣の部屋から見える風景。
あの空に浮かぶブタは、ピンク・フロイド「アニマルズ」の
ジャケットそのものです。
監督がROCK好きなのかな?